セッション情報 ワークショップ19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸内視鏡挿入法の基本と工夫

タイトル 内W19-12:

先端柔軟構造大腸鏡の「浸水法」による運用

演者 水上 健(国立久里浜アルコール症センター・内科)
共同演者 緒方 晴彦(慶應義塾大・内視鏡センター), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 一昨年フジフィルムよりEC-590WM3/ZM3、昨年オリンパスよりPCF-PQ260と先端柔軟構造大腸鏡が販売された。従来の大腸鏡では腸間膜の腸管懸垂状況によるヘアピン状屈曲部位の通過にはアングルがフルにかかった大腸鏡を押し込み滑らせ通過するしかなく挿入困難と苦痛の原因となっていた。先端柔軟構造では大腸鏡屈曲部の肛門側約10cmが受動的に屈曲してヘアピン状部位が鈍角化するため苦痛なく容易に通過することが可能となった。一方でPCF-PQ260は捻り剛性は高いが他機種に比して曲げ剛性が低いため肛門側結腸は挿入性良好だが、遠位の横行上行結腸では低い曲げ剛性によりたわみが生じ挿入性が低下する。これまで我々が報告した「浸水法(Dig Endosc2007. 19(1) 43-48)」は直腸で一定量注水して腸管内腔と視野を確保しながら直腸・S状結腸を完全脱気して境界面の解消で視野改善するとともに、空気による水の下行結腸への流出抑制を解除して水を下行結腸へ流出させて腸管を自ら虚脱短縮させる。圧縮した腸管の螺旋を利用して捻り操作により“コルク抜き”様に下行結腸までの直線的挿入が可能である。本法は米国における従来法とのrandomized studyで初心者の挿入時間短縮と鎮静剤の減量が可能と報告された(Endoscopy 2010; 42(7): 557-563)。「浸水法」は通常症例ではループ形成しないため無麻酔でも苦痛はないが、ヘアピン状部位の通過には従来法同様の苦痛を伴った。PCF-240Z,-PQ260の両者で大腸鏡を行った挿入困難例11例の検討でPCFで挿入不可能だった2例はPQ260により盲腸到達可能となり9例では10.12 + 3.2 vs 5.08 + 2.75 min (p<0.05)と時間短縮と苦痛軽減をみた。問題となる深部操作は「浸水法」では腸管容積変動がないためか横行結腸の形態異常がある1症例以外はすべて盲腸到達時間が短縮し、深部大腸での挿入操作にも支障がなかった。CTCを撮影している6症例の腸管形態の検討を含め提示する。
索引用語 浸水法, 先端柔軟大腸鏡