セッション情報 シンポジウム18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食道表在癌、早期胃癌に対するESDの長期予後

タイトル 内S18-5:

早期胃癌に対するESDの長期成績の検討

演者 大仁田 賢(長崎大・消化器内科)
共同演者 磯本 一(長崎大・消化器内科), 宿輪 三郎(宮崎病院)
抄録 【目的】早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は手技的に確立してきたが、その長期成績は明らかでない。今回ESDを施行し5年以上経過した症例の長期成績に関して報告する。【方法】対象は長崎大学消化器内科関連施設において2001年1月より2006年12月までにESDが施行された早期胃癌488症例、526病変(男性346例、女性142例、年齢33~92歳、平均71歳)。術後病理診断に基づく内訳は絶対適応病変263病変、適応拡大病変180病変、適応外病変83病変であった。ESD後5年の時点での追跡率は90.6%(442/488)、観察期間中央値65か月(1-107か月)。検討項目:1.局所再発 2.異時性異所性再発 3.リンパ節転移、遠隔再発、4.生命予後 【成績】1.局所再発は絶対適応、適応拡大で1例ずつ認めたが、いずれも分割切除となったものであった。2.絶対適応、適応拡大ではリンパ節転移、遠隔再発は認めなかったが、適応外で1例肝転移を認めた。3.異時性多発を15例に認めた。9例はESD後1-3年の間であったが、最長では7年後に再発を認めた。4. 経過観察中、胃癌死は適応外で追加切除を受けなかった1例のみであったが、他病死を75例に認めた。死因は他臓器癌が26例、呼吸器疾患20例、心疾患9例、脳血管疾患5例などが多くを占めていた。多発症例を除いた447症例の5年生存率は絶対適応86.3%、適応拡大86.8%、適応外81.9%と有意差を認めなかったが、適応外を追加手術の有無で分けた場合、手術有は100%、手術なしは61.3%と追加手術のない群は他の群に比べ有意に低くなっていた(p<0.001)。またESD時の年齢別にみると5年生存率が59歳以下92.1%、60代92.5%、70代84.9%、80歳以上73.4%と80歳以上では有意に低かった(p<0.001)。【結論】ESDにて治癒が得られても異時性多発の問題があり、follow upは永久に必要である。適応拡大は絶対適応と同様の長期予後が得られており、現在のガイドラインは妥当であると考えられた。適応外で追加手術を受けてない群や80歳以上の患者では予後が悪く、基礎疾患や併存疾患を考えながら治療適応を決める必要がある。
索引用語 早期胃癌, 長期予後