抄録 |
近年の内視鏡技術の進歩に伴い, 表在性の病変の視認性が向上する画像強調法が日常診療に導入されるようになった. 一方, 食道癌患者には高頻度に頭頸部癌を重複することから, 食道癌診療の一環として頭頸部癌のスクリーニングは必須であると考えられてきた. 現在, 食道癌患者をはじめとした高危険者を中心に, 画像強調法と拡大内視鏡を用いて頭頸部癌のスクリーニングを行う施設が増加したことから, 表在癌の段階で発見される機会が大幅に増えている. しかし, 頭頸部癌のスクリーニングにおいて, 画一的な観察法は確立されておらず, 施設間・術者間の技術格差が存在するのが実情である. そこで, 今回は見落としが少ない頭頸部領域の観察方法について, 基本とコツを説明しながらビデオで供覧する. まず, 内視鏡抜去時は, 唾液の貯留や咽頭麻酔効果の減弱により, 十分な観察が困難になるため, 最も条件の良い内視鏡挿入時に, 画像強調法と拡大内視鏡を用いてスクリーニングを行う. 反射を誘発しやすい中咽頭前壁や喉頭への接触は最小限にする. 反射が高度であれば, 咽頭麻酔を追加し, それでも抑制されない場合は鎮静剤の投与を検討する. 左梨状陥凹~後壁は粘液が付着していることが多いため, 観察視野を確保するために粘液の吸引を必要とすることが多い. 粘液の粘調度を減らすために, レンズ面への送水機能を用いて少量の水を粘液付着部に流し込んでから, 吸引することも有効である. 口腔観察時には舌の変位, 中・下咽頭~喉頭観察時は発声を活用して, 観察視野を確保する. 下咽頭は, 正中付近で一部盲点があるため, 透明フードや経鼻挿入下のバルサルバ法を活用して観察視野を確保する. 経口挿入では, 舌根の一部, 口蓋垂・口蓋弓の裏面, 上咽頭を観察できないが, 経鼻挿入では, 軟口蓋下面や口蓋垂の観察ができず, 中咽頭後壁~側壁は接線方向となり正面視しにくい. 頭頸部癌のスクリーニングにおいて, 効率的な観察法が確立され, 消化器内視鏡医が頭頸部癌の早期発見, 予後向上, QOLの改善に貢献することを期待している. |