抄録 |
【目的】通常内視鏡で境界不明瞭な早期胃癌に対するNBI併用拡大内視鏡(NBI拡大)の有用性と限界を明らかにする.【対象】2005年6月~2010年12月にESDを施行した早期胃癌のうち病理組織学的判定が可能な441病変.【方法】1:色素内視鏡観察で浸潤境界が全周性に同定できた病変を通常明瞭病変,できなかった病変を通常不明瞭病変とした.また両者の臨床病理学的所見を比較した.2:通常不明瞭病変を対象とし,VS classification systemを癌の指標としたNBI拡大により境界を全周性に同定可能病変を拡大可能病変,同定不能病変を拡大限界病変とした.また両者の臨床病理学的所見を比較した.【成績】1:通常不明瞭病変の頻度は16%(71/441病変)であった.通常不明瞭病変の肉眼型の特徴は,明瞭病変に対し0-IIbないし随伴IIb が高頻度 (P<0.05 )であった.2:通常不明瞭病変71病変中68病変にNBI拡大を施行した結果,拡大可能病変67.6% (46/68),限界病変32.3% (22/68)であった.全症例における限界病変の頻度は, 5.0% (22/441)であった.臨床病理学的所見のうち可能病変と限界病変の頻度を組織型別に比較すると,それぞれの頻度は分化型主体 46:13,未分化型主体0:9で,未分化型主体が限界例において高頻度であった(p<0.00001).分化型主体癌のみ対象としそれぞれの頻度を求めると,超高分化主体13:7,高分化主体31:4,中分化主体2:2であった.すなわち,超高分化主体と中分化主体が限界例において高頻度であった (p=0.03, p=0.04).【結語】通常内視鏡のみで境界不明瞭な病変の頻度は16%で,これらにNBI拡大を併用すると浸潤範囲診断限界例は5.0%に減少した.拡大限界病変は組織学的には、未分化型主体癌と中分化主体癌の一部,超高分化主体癌の一部であった. |