セッション情報 |
シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)
分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発
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タイトル |
消S1-1:肝細胞癌におけるapelin/APJ系を介した新しい血管新生阻害療法の可能性
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演者 |
武藤 純(九州大大学院・消化器・総合外科学) |
共同演者 |
調 憲(九州大大学院・消化器・総合外科学), 前原 喜彦(九州大大学院・消化器・総合外科学) |
抄録 |
【背景】Apelinは胎生期の血管新生において、受容体であるAPJに作用し血管径を拡張、壁を安定化する事が知られており、乳癌や非小細胞肺癌の血管新生への関与の報告もある。肝細胞癌の血管新生とapelin/APJ系の関与の報告はない。Sorafenibは、血管新生阻害効果を有するとされているが、肝細胞癌に対する奏効率は2%、生存期間の延長は2.8カ月とされ、効果は十分とは言い難い。【目的】肝細胞癌血管新生におけるapelin/APJ系の意義を明らかにし、新たな分子標的薬としての可能性を追求する。【対象・方法】(1)初発肝細胞癌切除90例。パラフィン包埋標本の連続切片を用いてAPJ、CD34の発現を免疫組織化学染色で検討した。RT-PCRを行い、癌部、非癌部のapelinの発現量を比較した。(2)画像診断上の腫瘍血管の発達と(1)の結果とを比較した。(3)マウス肝癌を用いた皮下腫瘍モデルにapelin阻害剤であるF13Aを投与し、抗腫瘍効果を観察した。【結果】(1)CD34の免疫組織化学染色で、癌部で血管が発達しており(p<0.001)、高分化癌より中、低分化癌で多く見られた(p=0.020, p=0.012)。APJは癌部における小動脈平滑筋に発現しており、高分化癌よりも中、低分化癌において多く見られた(p=0.019, p=0.017)。Apelinの発現量は癌部で非癌部と比べ多く(p<0.001)、脱分化するにつれ高発現していた(p=0.002, p=0.002)。(2)造影CT動脈相で膿染する腫瘍はCD34染色域が多く(p=0.026)、総肝動脈からの血管造影にて腫瘍内に拡張した異常動脈を認める症例のapelin発現量が多かった(p=0.012)。(3)皮下腫瘍モデルマウスでの検討では、F13Aはコントロールに比し、有意に腫瘍増殖を抑制した(p<0.001)。【結語】Apelin/APJ系は肝細胞癌の動脈血優位の血管新生に重要な役割を果たしており、新たな血管新生抑制療法のターゲットとなる可能性がある。 |
索引用語 |
apelin, APJ |