セッション情報 シンポジウム18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食道表在癌、早期胃癌に対するESDの長期予後

タイトル 消S18-8:

適応病変および相対適応病変に対する食道ESD後の長期予後

演者 山階 武(大阪府立成人病センター・消化管内科)
共同演者 石原 立(大阪府立成人病センター・消化管内科), 飯石 浩康(大阪府立成人病センター・消化管内科)
抄録 ESDにより多くの表在食道癌が内視鏡的に切除されるようになった。ESD後の短期予後は良好とされているが、長期予後に関する検討は少ない。【方法】当院では2003年以降、大きさ15mm以上の病変やMM以深への浸潤が疑われる症例を中心にESDを行ってきた。今回の検討対象は、2003年1月1日から2008年12月31日までに当院で内視鏡切除した症例のうち、1.ESDにて切除した食道扁平上皮癌(適応病変および相対適応病変)であり、2.遺残再発病変でない、3.放射線治療の既往がない、4.明らかな転移がない、5.治療前1年以内の活動性他臓器癌がない、を満たす症例である。これら対象について、最終治療例から3年以上経過した2011年12月31日の時点で、局所再発割合、食道内異時多発癌発生割合、転移再発割合、原病生存割合、全生存割合を検討した。【成績】期間中、306症例に内視鏡切除を施行した。このうち放射線治療歴のある25例、バレット食道癌の4例、遺残再発病変の3例、治療前1年以内に活動性他臓器癌を持つ56例、明らかな転移のあった1例、EMRによる切除をうけた99例、適応外病変の18例を除外した100例が検討対象となった。平均年齢は65歳、男性81例、女性19例。適応病変が69症例、相対適応病変が31例、平均観察期間は57ヶ月、予後判明率は97%であった。局所再発割合は1%(多分割切除例)、異時多発割合は15%であった。適応病変における5年累積転移割合、5年原病生存割合、5年全生存割合はそれぞれ1.4%、100%、95.6%であった。相対適応病変における5年累積転移割合、5年原病生存割合、5年全生存割合はそれぞれ13.6%、100%、88.9%であった。適応病変と相対適応病変の転移割合には有意差がみられた。相対適応病変における転移は、いずれも脈管侵襲陽性例で、うち2例はESD後に追加治療を行ったにも関わらず出現していた。【結語】適応病変および脈管侵襲を持たない相対適応病変に対する食道ESD後の予後は良好であった。脈管侵襲を持つ相対適応病変には、しばしばリンパ節転移を認めるため厳重なフォローが必要である。
索引用語 食道ESD, 長期予後