セッション情報 | シンポジウム1 |
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タイトル | 10:炎症性腸疾患に対する抗トリプターゼ療法の基礎的検討 |
演者 | 磯崎 豊(京都府立医科大学 大学院 医学研究科 生体機能制御学) |
共同演者 | 黒田 雅昭(京都府立医科大学 大学院 医学研究科 生体機能制御学), 吉田 憲正(2) 京都府立医科大学 大学院 医学研究科 消化器病態制御学) |
抄録 | 炎症性腸疾患(IBD)の治療には、5-ASA製剤、ステロイド剤、白血球除去療法などの抗炎症療法が広く使用されているが、コントロール不良、薬剤副作用の症例も少なくない。近年、炎症性腸疾患の発症・進展にプロテアーゼ、特に肥満細胞由来のトリプターゼおよびトリプターゼにより活性化されるprotease-activated receptor (PAR), MAPKの関与が示唆されているが、詳細な機序は不明である。今回我々は低濃度で強い抗トリプターゼ活性を有するメシル酸ナファモスタットの経肛門的投与法のIBDに対する有効性を評価するために、ラット実験的IBDモデルである2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)惹起性腸炎における治療効果を検討した。 方法:TNBS惹起性腸炎モデルは7週齢Wistar系雄性ラットを48時間絶食のうえ、経肛門的にTNBS (30mg/body)を注腸することで作成した。メシル酸ナファモスタットは、TNBS投与の24時間後から一日一回、6日間経肛門的に投与(10-9Mから10-13M)し、モデル作成7日後に治療効果を正常対照群、病態対照群及び5-ASA(5mg/body)経肛門的投与群と比較検討した。大腸粘膜傷害は肉眼スコアおよび組織学的所見により評価した。大腸粘膜内の脂質過酸化の指標として粘膜内thiobarbituric acid(TBA)反応物質を、大腸粘膜内への好中球浸潤の指標として粘膜内myeloperoxidase(MPO)活性を、粘膜内の炎症性サイトカインとしてCINC-1を測定した。 結果:TNBS投与により組織学的所見の悪化および肉眼スコア、TBA反応物質、MPO活性、CINC-1の有意な増加を認めた。メシル酸ナファモスタットの経肛門内投与は、10-9および10-11Mの濃度で傷害スコア、組織学的所見、TBA反応物質、MPO活性、CINC-1の増加を有意に抑制した。これらの治療効果は5-ASA経肛門的投与の効果と同等であった。 結語:低濃度のメシル酸ナファモスタットの経肛門的投与は、ラットTNBS大腸炎にたいし有意な治療効果を示し、現在臨床応用されている5-ASA経肛門的投与と同等の効果があると考えられた。現在、ヒト潰瘍性大腸炎(直腸炎、左側結腸炎型)に対するメシル酸ナファモスタットを用いた抗トリプターゼ療法の有効性を検討中である。 |
索引用語 | トリプターゼ, TNBS腸炎 |