セッション情報 ワークショップ23(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

大腸鋸歯状病変の内視鏡診断と治療

タイトル W23-基調講演:

病理からみた鋸歯状病変(特にSSA/P)診断の問題点

演者 藤盛 孝博(獨協医大・病理学(人体分子))
共同演者
抄録 大腸鋸歯状病変は組織学的に鋸歯状を呈する病変の総称である.過形成性ポリープ(HP)(1962,Morson),混合型ポリープ(Mixed)(1984,Urbanski),鋸歯状腺腫(SA)(1990,Longacre)に大きく分類できる.これ以外に10mm以上のlarge hyperplastic polypとserrated polyposisの呼称がある.鋸歯状病変は,Riddellの分類(大腸疾患NOW2008.78-79,日本メディカルセンター)が,診断時の判定困難な部分はあるが,分類としてはわかり易い.SAは大腸癌取扱い規約 第7版補訂版57ページに組織学的所見として,「腺管の上半部で上皮が鋸歯状形態を示す点で過形成ポリープに類似するが,それとは異なり,核の腫大や偽重層化,核分裂が表層部にも出現し,杯細胞の現象,細胞壁の好酸性化を示す」と記載されている.Riddellの分類のTraditional Serrated Adenomaに相当する像である.一方,組織図譜には過形成性ポリープは,「鋸歯状構造を伴う隆起性病変で,構成細胞は弱好酸性の細胞質を有し,腫瘍性異型を欠いている.増殖の強い部分は腺管の深層部にある」と記載されており,鋸歯状を呈さない過形成結節と区別されている.分類上,定義が不明瞭なことから診断や取り扱いが混乱している病変にsessile serrated adenoma/ polyp(SSA/P)がある.従来の腺腫とは異なり組織的には過形成と診断される病変のなかで過形成性ポリープとは異なる臨床病理学的な特徴を有する病変がSSA/Pである. Riddellの定義では細胞異型はないが増殖細胞帯が拡大していると表現してWHOの分類では寸胴型(boot-shaped)の腺管拡張と錨型,逆T字型,L字型などと表現される不規則な分岐を伴う陰窩構造の異常が重要とされている.SSA/Pが広基性鋸歯状腺腫/ポリープと訳されることから,鋸歯状腺腫の広基性と理解され混乱しているところもある.鋸歯状腺腫の癌化(serrated neoplasia pathway, 過形成性ポリープ(HP)からSSA/Pそして鋸歯状腺腫・癌)を考えるうえで,SSA/Pの診断は重要である.
索引用語 鋸歯状病変, SSA/P