抄録 |
【背景】病理形態的に鋸歯腺管構造を有する病変から癌化するserrated pathwayが新たな発癌経路として注目されている. 鋸歯状腺管構造を有する病変として過形成性ポリープ(hyperplastic polyp, HP), Traditional serrated adenoma(TSA)のほかSessile Serrated Adenoma/Polyp(SSA/P)の概念が提唱されている. しかし、これら鋸歯状腺管構造を有する病変の病理学的取扱いについてその診断基準・分類は統一されておらず, 内視鏡的な診断学も確立されていない.【目的】SSA/Pの内視鏡所見の特徴を明らかにする.【方法】久留米大学病院および関連施設において内視鏡的または外科的に切除され, 病理組織学的に鋸歯状構造を有する病変で, 肉眼形態が広基性の134病変(HP:53病変,SSA/P:49病変,TSA:32病変)を対象とし, 内視鏡所見と病理組織診断との関係を検討した. 検討項目は1)部位2)色調3)松毬様所見の有無4)二段隆起の有無5)星芒状IIIL型pitの有無6)乳頭状構造の有無7)シダの葉様所見の有無で, 3)4)は白色光観察, 5)6)7)はクリスタルバイオレット染色下拡大観察を行った. 病理診断基準はLongacre、Higuchiらに従った.【結果】1) SSA/PはHP, TSAに比して右側大腸に多かった(右側大腸の頻度: HP49.1%, SSA/P83.7%, TSA31.2%).2) HP, SSA/P, TSAの色調に差は認められなかった.3) TSA はHP, SSA/Pに比して有意に松毬様所見の出現頻度が高かった(出現頻度:HP3.6%, SSA/P0%, TSA28.1%).4) TSAはHP, SSA/Pに比して有意に二段隆起の出現頻度が高かった(出現頻度:HP0%, SSA/P12.2%, TSA34.4%).5) HP, SSA/P, TSA間で星芒状IIIL型pitの出現頻度に差は認めなかった.6) SSA/PはHP, TSAに比して有意に乳頭状構造の出現頻度が高かった(出現頻度:HP25.0%, SSA/P91.3%, TSA20%).7) TSAはHP, SSA/Pに比して有意にシダの葉様所見の出現頻度が高かった(出現頻度:HP0%, SSA/P13.0%, TSA80.0%).【結語】白色光観察に加え, クリスタルバイオレット染色下拡大観察を行うことで, SSA/PとHP, TSAを鑑別できる可能性が示唆された. |