セッション情報 一般演題

タイトル 71:

感冒薬で誘発された胆管消失症候群の一例

演者 玄 泰行(京都第一赤十字病院 消化器科)
共同演者 木村 浩之(京都第一赤十字病院 消化器科), 鷹尾 俊達(京都第一赤十字病院 消化器科), 池澤 聡(京都第一赤十字病院 消化器科), 西田 憲正(京都第一赤十字病院 消化器科), 葺屋 悦子(京都第一赤十字病院 消化器科), 増田 充弘(京都第一赤十字病院 消化器科), 舩津 英司(京都第一赤十字病院 消化器科), 中村 英樹(京都第一赤十字病院 消化器科), 奥山 祐右(京都第一赤十字病院 消化器科), 八木 信明(京都第一赤十字病院 消化器科), 久津見 弘(京都第一赤十字病院 消化器科), 藤本 荘太郎(京都第一赤十字病院 消化器科)
抄録 症例は33歳、女性。既往歴、家族歴に特記事項はない。平成15年末に風邪症状で市販の感冒薬を4回内服した。平成16年1月19日より心窩部不快感が出現。22日より倦怠感が高度となり、27日に近医受診。黄疸を指摘され当科紹介・入院となった。入院時には皮膚黄染とかかゆみ以外は自覚症状は軽度となっており、胸腹部に特に所見は認めなかった。入院時血液検査では、GOT217IU/l、GPT425IU/l、ALP640IU/l、γGTP300IU/l、T-bil12.2mg/dl、D-bil9.2mg/dlと肝胆道系酵素の上昇と黄疸を認めたが、CBC、凝固系には異常はみられなかった。肝炎ウイルスマーカーはABCとも陰性で、サイトメガロウイルス、EBウイルスは既感染パターンであった。抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体も陰性であった。腹部エコー、MRCPで胆管拡張を認めず、胆道シンチでは胆汁排泄遅延を認めた。2週間の安静でトランスアミナーゼは2ケタに下がるもT-bilが15前後で黄疸が遷延するため、経皮的肝生検を施行。組織所見では炎症細胞浸潤に乏しく、小葉間胆管のつぶれ、消失を認めた。感冒薬のDLSTがS.I.309%と陽性を示し、薬剤起因性の胆管消失症候群と診断し、ウルソ内服治療を行うも改善がみられず、ステロイド内服では逆にトランスアミナーゼが上昇したため使用を中止した。現在、発症から5ヶ月たっているが黄疸は遷延しており、ビリルビン吸着療法を考慮している。薬剤性胆管消失症候群としては現在までにカルバマゼピン、クロルプロマジン、フェニトインをはじめ、約30種の薬剤で報告されている。薬剤性胆管消失症候群は、臨床像はPBCに類似し、多くはPBCより予後は良好である。黄疸の軽快には数年かかる症例もある一方で、中には不可逆的に進行し、肝不全に至る例も少数ある。原因としては免疫学的な機序が示唆されているが明らかではない。PBCとの関連を含め、病態、治療法の解明が待たれる疾患群であり、興味深い症例を経験したので報告する。
索引用語 胆管消失症候群, 薬剤性肝障害