抄録 |
【目的】食道表在癌ESDの治療成績と長期予後から治療適応の是非を検討する。【対象と方法】2003-09にESDを行った食道表在癌126症例150病変のうち,追跡可能であった121症例145病変(追跡率96%)を対象とした。対象の内訳は平均年齢70歳,男女比111:10,平均観察期間4.2年,深達度EP-LPMの適応107病変(A群),MM-SM1の相対適応29病変(B群),SM2以深の適応外9病変(C群)であった。(1)一括完全切除率, (2)追加治療施行率,(3)局所再発率, (4)リンパ節転移再発率, (5)遠隔転移再発率, (6)異時多発癌,(7)異時他臓器癌, (8)3年生存率,(9)5年生存率を検討した。【結果】全症例(A群/B群/C群)それぞれの治療成績(%)は,(1)90 (89/ 93/ 78)で,不完全切除の要因は術後や遺残再発による強い線維化,異型上皮の多発,狭窄回避のため意図的に病変境界上を切開した症例などであった。(2)4.5 (0/ 10/ 56), CRT7例,手術1例であった。(3)1.4 (0/ 3.4/ 11), B群C群各1例で, B群の1例は切除困難なため急遽分割EMRとなった症例で,遺残再発に対して再ESDを行った。C群の1例はSM2(500μm),ly0,v0,HM0,VM0で予防的CRTを施行したが9か月後に局所再発を認めた。外科手術を行い71カ月無再発生存中である。(4)0.7 (0/ 3.4/ 0),(5)0.7 (0/ 3.4/ 0),B群の1例で25カ月後にリンパ節および肺転移を認めた。SM1,ly0,v0,INFc,HM0,VM0で追加治療は未施行だった。再発後にCRTを施行し91カ月無再発生存中である。(6)16 (20/ 14/ 11),(7)17 (17/ 21/ 22)。(8)96 (95/ 100/ 78),(9)89 (90/ 96/ 78),いずれも他病死であった。【結語】A群に対するESDは局所再発や転移再発がなく,根治性の高い治療法であった。B群は病理評価に基づく追加治療の選択により良好な生存率が得られ,initial treatmentとしてのESDは有用であった。C群は全身状態不良例が多く,他群より生存率は低いが,既報の手術や放射線治療の成績と遜色なく,適応を選択すればESDも許容されると考えた。いずれの群も異時多発食道癌および異時他臓器癌は比較的高頻度であり,注意深い経過観察が必要である。 |