セッション情報 ワークショップ23(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

大腸鋸歯状病変の内視鏡診断と治療

タイトル 内W23-10:

右側結腸におけるSSA/PとHPの内視鏡的鑑別診断及び遺伝子異常に関する検討

演者 井上 篤(徳島大・消化器内科)
共同演者 岡本 耕一(徳島大・消化器内科), 高山 哲治(徳島大・消化器内科)
抄録 【目的】大腸鋸歯状病変の一つであるSSA/Pは、右側結腸に好発し発癌ポテンシャルを有することが知られている。しかし、内視鏡的特徴や遺伝子異常については不明な点が多い。そこで本研究では、右側結腸で腫瘍径をほぼ適合させたSSA/PとHPの内視鏡的鑑別診断及び遺伝子異常に関する検討を行った。【対象・方法】2009年3月から当院においてSSA/Pと診断(診断基準:WHO分類第4版に準拠し腺管深部まで拡張を認め、さらに分岐を有する病変とした)された右側結腸のSSA/P 20病変(腫瘍径中央値:12mm)と同時期に切除された右側結腸のHP20病変(腫瘍径中央値:10mm)を対象とした。これまで我々が報告してきたSSA/Pの内視鏡所見と考えられる通常観察1)肉眼型(Is or IIa)2)色調(褪色調)3)大きさ(10mm以上)4)粘液付着(+)NBI拡大観察5)Meshed brown capillary vessel(-)6)小樹枝状血管(+)クリスタルバイオレット染色拡大観察7)開大したII型pit(+)について3名の内視鏡専門医に事前に1時間の講義を行った後、SSA/P20病変、HP20病変がランダムとなっている画像集を読影させ、その1)正診率2)感度3)特異度4)陽性的中率5)陰性的中率を検討した。またSSA/P,HP組織よりDNAを抽出し、2-step PCR RFLP法によりB-RAF及びK-RAS変異を解析した。また、PCR-SSCP法によりMSIを検索した。【結果】3名の内視鏡専門医の1)正診率2)感度3)特異度4)陽性的中率5)陰性的中率の平均値はそれぞれ1)55.8% 2)63.3% 3)48.3% 4)56.4% 5)53.6%であった。また遺伝子解析では、SSA/PはB-RAF変異19/20(95%)、K-RAS変異1/20 (5%)、MSIはMSI-L 2/20(10%)に認められた。HPはB-RAF変異14/20(70 %)、K-RAS変異3/20 (15%)、MSIは全例陰性であった。【結語】右側結腸で腫瘍径をほぼ適合させたSSA/PとHPの内視鏡的鑑別は症例数は少ないが現段階では困難と考えられた。またSSA/PとHPは分子生物学的にも類似する傾向が認められた。これらの病変の違いは種々の細胞増殖抑制に関わる遺伝子のメチル化との報告もあり今後検討する必要性があると考えられた。
索引用語 SSA/P, 遺伝子異常