セッション情報 ワークショップ23(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

大腸鋸歯状病変の内視鏡診断と治療

タイトル 内W23-11:

大腸鋸歯状病変群における表面微細構造別病理組織及び遺伝子学的特徴の検討

演者 木村 友昭(秋田赤十字病院・消化器病センター)
共同演者 山野 泰穂(秋田赤十字病院・消化器病センター), 山本 英一郎(秋田赤十字病院・消化器病センターDELIMITER札幌医大・分子生物学)
抄録 [背景と目的]近年,sessile serrated adenoma/polyp(以下SSA/P)からの癌化が新たな発癌経路(serrated neoplastic pathway)として提唱されるようになり,大腸鋸歯状病変群は大変注目されている.しかしながら,大腸鋸歯状病変群の臨床的特徴は一定のコンセンサスが得られていない.我々は,大腸鋸歯状病変群における表面微細構造の亜分類を仮定し,高画素拡大内視鏡を用いた拡大所見の観点から,病理組織及び遺伝子学的特徴を検討し報告する.[対象と方法]2009年2月~2010年12月までの期間,当センターで内視鏡的切除した大腸鋸歯状病変群81病変に対し,表面微細構造別に病理組織及び遺伝子学的解析を行った.表面微細構造は,工藤・鶴田分類のII型pit patternを典型的なII型(II型)と,星亡状を基本とするが腺管開口部が伸長したもの(伸II型),星亡状を基本とするが腺管開口部が開大したもの(開II型)に亜分類した.病理組織診断はHiguchiら, Torlakovicらの分類に準拠し,遺伝子に関しては,遺伝子変異(BRAF, ki-ras)とメチル化を検討した.[結果]開II型は他と比較してBRAF変異,CIMP+が高頻度に認められた(II型, 伸II型, 開II型 BRAF変異: 22, 50, 89%. CIMP+: 11, 43, 72%).開II型を有した36病変中34病変が病理組織学的にSSA/Pと診断された.開II型の有無によるSSA/Pの鑑別は,感度72.3% 特異度94.1%であった.伸II型を呈した30病変中11病変が病理組織学的にSSA/Pと診断されたが,その内8病変(73%)にBRAF変異が見られた.Cancer in SSA/Pは4病変あったが,いずれも同一病変内にIV型やV型pitを呈した部分に一致して癌化が見られ,3病変では癌部にMSIを認めた.[考察]今回の検討では,開IIを呈するもののほとんどが病理組織学的にSSA/Pであり,BRAF変異とCIMP+が高率に認められた.開II所見はSSA/Pの診断に有用である可能性が示唆された.また,SSA/P病変内における表面微細構造の変化を捉えることが治療適応を決定する上で一助となる可能性が示唆された.
索引用語 SSA/P, pit pattern