セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

嚢胞性膵腫瘍の病態からみた治療

タイトル 外W24-5:

急性膵炎、嚢胞感染で発症したIPMNの治療方針に関する検討

演者 唐崎 秀則(旭川医大・消化器病態外科)
共同演者 谷口 雅彦(旭川医大・消化器病態外科), 古川 博之(旭川医大・消化器病態外科)
抄録 【目的】IPMNの術前悪性度診断には様々な因子があるが、臨床症状の有無もその一つであるとされる。最近急性膵炎を伴う腸型IPMNは非腸型IPMNと比べ浸潤癌の頻度が高いことが報告されたが、急性膵炎の有無が治療方針にあたえるインパクトに関してはなお不明な点も多く、明らかにして行く必要がある。【方法】1994年1月から2011年3月までの間に当科で切除し、組織学的にIPMNと診断された63例を対象とした。IPMNの組織学的異型度はAFIPの分類に準拠して良性、上皮内癌、浸潤癌に分類した。浸潤癌に関しては柳澤らの基準によるIPMN由来浸潤癌確診例と、擬診例を検討対象とした。急性膵炎(AP)ないしIPMNの嚢胞感染(INF)を契機に発症した例を感染症例、それ以外を非感染症例として両者を比較した。また各症例の代表的切片でMUC1/2免疫染色を行い腸型、胃型、胆膵型に亜分類した。【成績】63例のうち感染症例が20例(AP17例、INF3例)、非感染症例は43例で、31.7%が感染を契機に発症していた。粘液発現形質は腸型が27例、胃型が29例、胆膵型が7例であった。腸型は非感染症例12例に対し感染症例が15例(AP14例、INF1例)、胃型では非感染症例24例に対し感染症例が5例(AP3例、INF2例)で、腸型で有意に感染症例を多く認めた(P<0.01)。浸潤癌は腸型27例中6例(22.2%)、胃型29例中13例(44.8%)、胆膵型7例中5例(71.4%)であった(P>0.05)。浸潤癌に占める感染症例の頻度は、腸型では6例中3例(50%)、胃型13例中2例(15.4%)、胆膵型5例中0例であった。これら感染を伴う浸潤癌症例でリンパ節転移を認めたものは、腸型は3例全例、胃型は2例中1例であった。【結論】腸型は胃型や胆膵型と比べ急性膵炎や嚢胞感染の頻度が高い。症例数が少なく有意差はないものの、感染を伴う腸型浸潤癌では胃型や胆膵型と比べリンパ節転移頻度が高い傾向がある。以上より急性膵炎や嚢胞感染などの感染徴候を認めたIPMNは特に腸型において早期の切除を考慮すべきであると考えられた。
索引用語 IPMN, 急性膵炎