セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

嚢胞性膵腫瘍の病態からみた治療

タイトル 外W24-7:

病変の分布と術後経過からみた主膵管型IPMNに対する術式選択の検討

演者 伊藤 達雄(京都大・肝胆膵・移植外科)
共同演者 土井 隆一郎(京都大・肝胆膵・移植外科DELIMITER大津赤十字病院・外科), 上本 伸二(京都大・肝胆膵・移植外科)
抄録 【はじめに】主膵菅型IPMNは悪性化の頻度が高く、切除の適応と認識されているが、国際診療ガイドラインでも、その術式までは言及されていない。術前に悪性病変の存在を正確に予測することは容易でなく、切除範囲の決定に難渋する場合がある。主膵管型IPMNの適切な切除術式を検討する基礎的な情報を得るため、膵全摘術を施行した主膵管型IPMN症例の病変の局在を詳細に調査するとともに、術後経過の評価を行った。【対象と方法】2002年6月から2009年12月に、術前に主膵管型IPMNと診断され当院で膵全摘術をおこない、術後診断も主膵管型であった23例。WHOの分類に従って病理診断を行い、その分布を図示した。術後経過は診療録を参照した。【結果】23例中18例でcarcinomaと診断され、そのうち8例はinvasive carcinomaを含んでいた。5例ではcarcinomaの成分は認めなかったが、borderline lesionが膵全体に広く分布していた。同一切片上にadenomaからcarcinomaまで様々な成分が混在しており、悪性病変の間に正常上皮が認められる部分もあった。予後は良好であり、1例を除き再発は認めなかった。術後18か月のinsulin量は24.7±8.2IU/day、HbA1cは7.8%±1.6%であり良好にコントロールされている。また、albumin値は3.9±0.7g/dlで栄養状態も比較的良好であった。多くの症例で低血糖発作が認められたが、通常の社会生活が維持されている。【考察】病変の広がりを検討したところ、borderline以上の病巣の局在を術前に推定することは困難であると考えられた。また、術中診断でも切離線の妥当性を判断することは難しいと思われる。今回検討した症例では、膵全摘術以外では全ての病変は切除しえないものと考えられた。一方、術後経過は良好であり、再発例もリンパ節転移を認めた1例のみである。術前画像診断で全膵に病変が認められた主膵管型IPMNに対する膵全摘術は、妥当な術式であると考えられた。
索引用語 IPMN, 膵全摘術