抄録 |
【背景】IPMNの正確な診断はときに困難だが適切な評価により経過観察、あるいは縮小・低侵襲手術を選択できる場合がある。当科の切除例を検討した。【対象】2007年1月から2011年2月までのIPMN切除50例(平均年齢68歳、男女比33:17、主膵管型:分枝型 22:28)。MDCT、MRCP、EUSを施行し、症例によりERP、FDG-PETを行う。術式は浸潤癌は定型的膵切除(D2郭清)、微小浸潤癌まで(以下非浸潤癌と記載)は局在や進展範囲により縮小手術や腹腔鏡下手術も検討する。術中超音波で切離線を決定し、膵断端の術中迅速病理診断を行う。【結果:手術】施行術式は膵全摘2例、膵頭十二指腸切除27例、尾側膵切除18例(腹腔鏡8例)、膵中央切除3例であった。41例に膵断端の術中迅速病理診断を行い、陽性6例(15%)で追加切除した。術中迅速病理診断良性例で1例のみ永久標本で悪性、結果的に断端陽性となった。【結果:診断】非浸潤癌と術前診断した37例の正診率は30%、浸潤癌13例では92%で、分枝型非浸潤癌の26例では27%と最も低率であった。分枝型良性例の63%では壁在結節の存在で手術適応となった。悪性を示唆する項目の検討では、血清CA19-9に有意差はなく、結節の有無および結節径で有意差を認めた(P=0.011, 0.005)。術前細胞診で悪性疑い以上では正診率は75%であったが悪性と診断された例では100%であった。PETは35例に行われFDG集積の有無は悪性度、結節有無、結節径と相関した(P=0.002, <0.001, 0.005)。【考察】膵全摘例は尾側膵切除よりの移行例のみで、術中迅速病理診断により全摘を回避し得た例もある。術中迅速病理診断の膵断端の正診率は93%で、縮小手術も含め、適切な切除範囲を決定する上で有用であった。術前診断で過小評価例はなかったが、一方で分枝型の術前正診率は低く、診断精度向上には壁在結節の有無のみでなく結節径や、PETによる機能診断を含めた評価が重要と考えられた。細胞診は偽陽性がなく信頼性の高い検査であった。 |