セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

嚢胞性膵腫瘍の病態からみた治療

タイトル 外W24-9:

IPMNおよび他の嚢胞性膵腫瘍に対する外科治療方針

演者 中郡 聡夫(東海大・消化器外科)
共同演者 飛田 浩輔(東海大八王子病院・外科), 木下 平(国立がん研究センター東病院・上腹部外科)
抄録 【目的】嚢胞性膵腫瘍の病態と治療についてのエビデンスは少なく、未だにコンセンサスが得られていない点も多い。そこで嚢胞性膵腫瘍271例に対する外科治療成績について検討した。【方法】IPMN212例、MCN15例、SPN22例、SCN22例を対象として臨床病理学的所見と生存率についてretrospectiveに検討した。【成績】術式は、IPMNではPD61%、DP23%、膵中央切除6%、膵全摘4%、十二指腸温存膵頭切除4%、下膵頭切除3%、MCN・SPN・SCN群ではPD15%、DP57%、膵中央切除15%、十二指腸温存膵頭切除2%、膵部分切除8%であった。IPMNの病理所見は、102例(48%)が腺腫、57例(27%)が非浸潤癌または微小浸潤癌、そして53例(25%)が浸潤癌であった。主膵管型IPMNの腺癌は61%で、分枝型IPMNの腺癌は48%であった。IPMN浸潤癌の組織型は、高分化型管状腺癌40%、粘液癌28%、そして中分化型管状腺癌23%であった。粘液癌の5年生存率は71%で、管状腺癌の5年生存率16%と比べると有意(P<0.05)に良好であった。ムチンコア蛋白質(MUC1、MUC2、MUC5AC、MUC6)の存在を免疫組織学的に検討したところ、IPMN浸潤癌ではMUC1(+)58%、MUC2(+)42%、微小浸潤癌と非浸潤癌ではMUC1(+)33%、MUC2(+)61%、腺腫ではMUC1(+)30%、MUC2(+)40%であった。MCNは15例中2例が腺癌であった。IPMN浸潤癌の術後1,3,5年生存率は、81%,41%,31%と不良であった。反対にIPMN腺腫、非浸潤癌、微小浸潤癌およびMCN・SPN・SCN群の術後生存率は良好であった。IPMN浸潤癌および微小浸潤癌のstage別の生存率を比較すると、stage 4症例(N=18)の1,3,5年生存率は、54%,14%,7%で、stage 1・2・3症例(N=35)の生存率94%,55%,45%と比較して有意(P<0.001)に不良であった。【結論】分枝型IPMNでは腺腫が多く、慎重に手術適応を検討すべきである。IPMN浸潤癌の粘液癌は管状腺癌よりも有意に予後良好であった。IPMN浸潤癌の生存率は通常型膵癌と比較すると良好ではあるが、stage4の予後は極めて不良であった。
索引用語 IPMN, 嚢胞性膵腫瘍