セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

嚢胞性膵腫瘍の病態からみた治療

タイトル 外W24-10:

嚢胞性膵腫瘍に対する腹腔鏡下膵切除術の有用性

演者 中村 慶春(日本医大・外科)
共同演者 内田 英二(日本医大・外科), 田尻 孝(日本医大・外科)
抄録 【緒言】教室では、当院倫理委員会承認後の2004年3月に腹腔鏡下膵切除術(Lap-P)を導入し、現在まで腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(Lap-PD)、膵体尾部切除術(Lap-DP)、膵中央切除術、核出術(Lap-EN)を合わせて71例に施行しその安全性と有用性について報告してきた。今回嚢胞性膵腫瘍に対するLap-Pの有用性について検討した。【対象】Lap-Pを施行した71例中嚢胞性膵疾患は42(女性34)例であった。平均年齢は56.4(14-76)歳で、糖尿病、他臓器癌などの併存疾患を25例に認めた。腫瘍径は平均5.7(2-17)cmで、腫瘍占拠部位はPh1例、Pb25例、Pt16例であった。疾患の内訳はMCN15例(内2例は悪性)、SCN8例、IPMN6例(内1例は悪性)、SPT3例、膵島腫瘍3例、転移性膵腫瘍2例、浸潤性膵管癌(PC)1例、その他4例であった。【術式】Lap-PDは混合型IPMN1例に対して施行した。Lap-DPは39例に施行し、術前診断が分枝型IPMNであった5例には脾臓と脾動静脈を温存した。Lap-ENはSCT1例と突出型で結節性病変がなく腫瘍径の小さいMCT1例に施行した。【結果】手術時間は平均323(170-644)分で、出血量は平均264(0-1250)mlであった。その中でLap-PDを施行した症例の出血量は50mlであった。局所進展度T4のPC1例とMCT1例は開腹術に移行した。術後、排ガスは平均1.7日に出現し、経口摂取は平均2.8日に開始した。膵液瘻の発生率は、Grade A:38.1%、B:4.8%、C:0%で全例保存的に軽快した。術後在院日数は平均12.3(6-30,中央値10)日であった。経過観察期間は平均33.6(1-85)カ月で、PC1例とMCT由来のPC1例が原病死した。後期合併症として創部ヘルニアを2例、新たな糖尿病発生例を1例に認めた。【結語】嚢胞性膵腫瘍に対するLap-Pは安全に施行することができ、若年の女性に多い疾患であるため整容面における恩恵は大きく、また早期離床・術後在院期間の短縮にも貢献し得る術式であると考えられた。今後本術式が嚢胞性膵腫瘍に対する標準的な術式になっていくために、さらなる中長期的な検討が必要であると思われる。
索引用語 嚢胞性膵腫瘍, 腹腔鏡下膵切除術