セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

食道・咽頭-基礎

タイトル 消P-3:

食道扁平上皮がん及び非がん部粘膜におけるDNA低メチル化の解析

演者 松田 恭典(国立がん研究センター研究所・エピゲノム解析分野DELIMITER大阪市立大大学院・消化器外科学)
共同演者 形部 憲(国立がん研究センター研究所・エピゲノム解析分野DELIMITER大阪市立大大学院・消化器外科学), 井垣 弘康(国立がん研究センター中央病院・食道外科), 大杉 治司(大阪市立大大学院・消化器外科学), 牛島 俊和(国立がん研究センター研究所・エピゲノム解析分野)
抄録 【背景・目的】食道扁平上皮がんは同時性にも異時性にも多発することが知られる。その機構として、背景粘膜に既に遺伝子異常及びDNAメチル化異常が蓄積し、発がんの素地が形成されていることが考えられている。これまで我々は、扁平上皮がんが発生する以前の食道粘膜でも、遺伝子プロモーター領域の高メチル化は既に存在していることを報告してきたが、低メチル化の有無については全く明らかにされていなかった。そこで本研究では、食道扁平上皮がん及び非がん部における低メチル化の存在の有無を明らかにすることを目的とした。
【対象・方法】材料には、食道扁平上皮がん患者のがん部(n = 141)と非がん部食道粘膜(n = 137)、及び健常者の正常食道粘膜(n = 95)より採取された計373検体を用いた。反復配列(Alu、LINE1)におけるDNAメチル化状態はパイロシークエンス法により、癌精巣抗原遺伝子(NY-ESO-1MAGE-C1)のDNAメチル化状態は定量的メチル化特異的PCR法により解析した。
【結果】解析を行なった全ての反復配列と癌精巣抗原遺伝子において、がん組織では非がん部組織に比し、DNA低メチル化が認められた(p < 0.001)。加えてAluにおいては、非がん部食道粘膜でも、正常食道粘膜に比べてDNA低メチル化が認められた(p = 0.018)。また、NY-ESO-1MAGE-C1のDNA低メチル化が認められた検体では、各々の抗原が発現していることが免疫染色法にて確認された。がん組織では、反復配列と癌精巣抗原遺伝子のDNAメチル化レベルは互いに有意な相関を示した(r = 0.240 ~ 0.566)。
【結語】本研究により、食道扁平上皮がんでも、他のがん種と同様にDNA低メチル化が認められること、また、非がん部組織でもAluの低メチル化が認められることが初めて明らかになった。特にAluの低メチル化は、発がんの素地となるDNAメチル化異常の程度を反映している可能性が示唆された。
索引用語 食道, エピジェネティクス