セッション情報 一般演題

タイトル 15:

肝性脳症の発症を契機に診断された肝内多発門脈肝静脈短絡症の1例

演者 山崎 克(札幌厚生病院 第3消化器科)
共同演者 佐藤 隆啓(札幌厚生病院 第3消化器科), 加藤 智大(札幌厚生病院 第3消化器科), 荒川 智宏(札幌厚生病院 第3消化器科), 松本 晋一郎(札幌厚生病院 第3消化器科), 桑田 靖昭(札幌厚生病院 第3消化器科), 赤池 淳(札幌厚生病院 第3消化器科), 大村 卓味(札幌厚生病院 第3消化器科), 狩野 吉康(札幌厚生病院 第3消化器科), 豊田 成司(札幌厚生病院 第3消化器科), 須賀 俊博(札幌厚生病院 第3消化器科), 長谷川 貴(札幌厚生病院 放射線科)
抄録 今回我々は肝性脳症を伴う非肝硬変合併肝内多発PVshunt症例を経験したので報告する。症例は60歳、女性、主訴は意識障害。平成16年5月6日意識障害で近医脳外科受診。脳波検査で三相波と血液検査で肝機能障害と高アンモニア血症が認められた。非吸収性合成二糖類とアミノ酸製剤が投与され、症状改善の後、肝性脳症の原因精査のため当院紹介入院となる。入院時血液検査ではGOT62 IU/L、GPT58 IU/L、LDH479 IU/L、ALP361 IU/L、γGTP25 IU/L,と軽度の肝障害を認めたが、 HBsAg(-)、HCVAb(-)、抗核抗体陰性、他の自己抗体も陰性であった。NH3 121μg/dl(16~53)、フィシャー比1.46(2.43~4.40)と高アンモニア血症とアミノ酸不均等を認めた。頭部MRIではT1強調像で大脳基底核の高信号化を認め、他の器質的疾患の合併は認めなかった。CT検査では肝硬変、脾腫、肝外側副血行路は認めず、肝S4領域を中心に拡張した門脈枝と肝静脈枝の連続を認め、肝血管腫、肝のう胞を合併していた。また超音波カラードプラでは肝静脈枝と門脈枝の拡張蛇行した連続を複数認めた。腹腔動脈造影では背側膵動脈に5×10mmの動静脈奇形を合併していた。経動脈性門脈造影では肝内に瀰漫性にPVshuntが存在し、CTAPでは複数のPVshuntと、肝部下大静脈に短枝が直接流入していた。また右卵巣静脈も造影され腎静脈近傍で下大静脈に合流していた。NH3サンプリングで右総腸骨静脈47μg/dl、腎静脈合流部下大静脈76μg/dl、肝部下大静脈85μg/dl、右心房101μg/dlとCTAP所見に合致し腎静脈部でstep upしていた。以上より高アンモニア血症の原因として非肝硬変合併肝内多発PVshuntと門脈系-右卵巣静脈短絡によるものと考えられた。また肝血管腫、動静脈奇形と脈管変異を種々認めOsler病も疑われたが、臨床症状、家族歴から確定できなかった。現在、軽度NH3高値であるが内服薬、蛋白制限食で症状コントロールされているため慎重に経過観察中である。
索引用語 肝性脳症, 門脈肝静脈短絡