セッション情報 シンポジウム18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

食道表在癌、早期胃癌に対するESDの長期予後

タイトル 内S18-12:

食道表在癌に対するESDの長期的治療成績

演者 高橋 宏明(恵佑会第2病院・消化器内科)
共同演者 岡原 聡(恵佑会第2病院・消化器内科), 有村 佳昭(札幌医大・1内科)
抄録 【目的】食道表在癌に対する内視鏡治療としてESDは、近年適応症例の増加により手技の安定化が得られ、安全性は確立されて標準治療の一つとなりつつある。しかし、長期に経過観察した報告は少なく、その有効性についてはまだ十分に検証されていない。今回われわれはESDを施行した食道表在癌症例の長期成績を明らかにすべく検討を行った。【方法】2009年2月までに恵佑会札幌病院でESDを施行した食道表在癌症例で、前治療のあるもの、追加治療を行ったもの、および腺癌症例を除外した222例のうち、経過観察が行えなかった2例を除いた220例を対象とした。病理組織学的深達度がEP-LPMであったものを適応群、MM-SM1であったものを相対適応群、SM2以深であったものを適応外群とし、それぞれにおける局所再発、リンパ節・遠隔再発、生存率を比較検討した。【成績】対象症例220例のうち、適応群は173例、相対適応群は37例、適応外群は10例であった。また、3年以内の死亡例を除き、3年以上規定の経過観察が行えた症例は91.0% (181/199)であった。観察期間中央値は、全体で48ヶ月、適応群で48ヶ月、相対適応群で53ヶ月、適応外群で32.5ヶ月であった。局所再発率は、適応群で0.6%(1/173)、相対適応群で0%、適応外群で0%であった。リンパ節・遠隔再発率は、適応群で0%、相対適応群で8.1%(3/37)、適応外群で10.0%(1/10)であった。観察期間中に異時多発癌の発生を認めたものは23例(10.5%)、60病変であり、いずれも内視鏡治療が可能であった。5年生存率は、適応群で89.2%、相対適応群で86.8%、適応外群で61.7%であった。食道癌死例は適応外群の1例のみであった。他臓器癌合併例は100例(45.5%)に及ぶも、死亡例のうち, 他臓器癌死は39.3%(11/28)、肺炎などの他病死が42.9%(12/28)であった。【結論】食道表在癌に対するESDの局所制御能は長期的にも良好であった。長期予後は適応群においては良好で、相対適応群でもリンパ節再発例がいるにもかかわらず適応群同様良好であり、ESDが有効な治療法の一つであると考えられた。
索引用語 食道表在癌, ESD