セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

食道・咽頭-悪性疾患1

タイトル 消P-20:

Barrett腺癌におけるHER2発現の検討

演者 田中 健大(岡山大病院・病理診断科)
共同演者 藤村 篤史(岡山大病院・病理診断科)
抄録 2011年は分子選択的治療薬であるトラスツズマブが適当となり、胃癌治療のテーラーメード化の幕開けとなった。ToGA試験の結果を見ると、古典的な胃癌分類であるLauren分類でのintestinal typeで、また、接合部癌でHER2が高発現となる結果が示された。今回われわれはBarrett腺癌に照準を当てて、HER2ならびに他の臨床病理学的な因子との比較を行った。1998年から2011年まで当院での加療された分化型Barrett腺癌25例を対象に検討を行った。年齢は42歳から87歳までで、年齢平均値は70.9歳で、男女比は16:9で男性優位であった。壁深達度はpT1a/pT1b/pT2/pT3/pT4=12/9/1/2/1であった。肉眼型は3型が3例で、残りの22例は0型で、その内訳は0-I型5例、0-I+IIa型1例、0-I+IIb型2例、0-IIa型4例、0-IIa+IIc型2例、0-IIa+IIb型1例、0-IIc型6例、0-IIc+IIa型1例であった。隆起病変であるI型あるいはIIa型を含む病変が全体の84%を占めた。組織学的にはpap: 4例、tub1: 12例、tub2: 9例であった。免疫組織学的なHER2の発現の検討では3+/2+/1+/0=3/6/2/14で、HER2:3+の症例は全体の12%であった。粘液の発現を検討すると胃型粘液形質を示した症例が2例、腸型粘液形質が2例で残りは混合型であった。TP53の発現は全体の68%に認められた。HER2: 3+の症例では男性1例、女性2例で、年齢平均72歳であった。全例が乳頭状腺癌で、免疫組織学的にHER2が有意に高率に発現することが示された。また、全例でTP53が陽性であったが統計学的に有為差は認めなかった。粘液形質は胃型1例、腸型1例、混合型1例であった。免疫染色のみではHER2の陽性率が12%であったがHER2: 2+症例のISHが上乗せされると陽性率が20%程度になることが期待されるデータであった。また組織学的には乳頭状構造を示す病変で高率に陽性となることが示された。Barrett腺癌におけるHER2発現の意義の解析において、ISHを用いた遺伝子検索が必須ではあるが、小規模の免疫組織学的な検索のみであってもデータを集積することに意味があるものと考える。
索引用語 HER2, Barrett