セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
食道・咽頭-悪性疾患1
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タイトル |
消P-25:食道アカラシアにおける慢性炎症に起因した上皮内腫瘍発現および癌化に関する臨床的検討と病理組織学的考察
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演者 |
千野 修(東海大・消化器外科) |
共同演者 |
小澤 壯治(東海大・消化器外科), 島田 英雄(東海大大磯病院・外科), 伊東 英輔(東海大・消化器外科), 數野 暁人(東海大・消化器外科), 生越 喬二(東海大・消化器外科), 幕内 博康(東海大) |
抄録 |
【目的】アカラシアは下部食道噴門部の弛緩不全に起因した良性機能性疾患であるが食道癌発生の危険因子となり、その癌化は慢性炎症に伴う粘膜上皮の変化が原因と考えられる。今回、アカラシア合併食道癌について臨床病理学的に検討しその特徴を明らかにし、癌病巣に併存する過形成と上皮内腫瘍の臨床的意義と癌化について病理組織学的に考察した。【対象と方法】アカラシア合併食道癌の17例を対象として臨床病理学的所見を検討し、病理組織学的に癌部、上皮内腫瘍、過形成の分布を検索した。また細胞生物学的特徴を検索するためにp53、p21、p16とEGFRの発現を浸潤癌部、粘膜内癌部、上皮内腫瘍、過形成、正常上皮に分けて免疫組織学的に検討を加えた。【結果】年齢48~76歳(中央値63.4歳)、男女比13:4。拡張型はフラスコ型8例、S状型9例、拡張度はII度11例、III度6例で発癌していた。アカラシア術後で通過障害解除後でも6例に癌化を認めた。発癌までの病悩期間は平均22.9年、術後例では13.2年であった。表在癌8例、進行癌9例、肉眼病型は隆起型7例、陥凹型9例、平坦型1例で、占居部位が2領域以上の広範囲に及ぶ症例が9例を占めた。病理組織学的には高度に肥厚した過形成と分化勾配を伴い基底層から傍基底層を中心とした上皮内腫瘍が存在しており、また低異型度分化型扁平上皮癌との混在を認めた。免疫組織学的検討ではp53蛋白は異形成、癌部で発現頻度が増加し、p21、p16は癌部で発現が低下していた。EGFR過剰発現は過形成、異形成、癌部で高頻度に発現していた。【結論】アカラシアでは通過障害に伴う慢性炎症に起因した粘膜破壊、修復、再生によって粘膜の過形成と上皮内腫瘍が生じ、低異型度分化型癌が発生すると推測され、dysplasia-carcinoma sequenceの関与が示唆された。食道アカラシアでは食道癌の早期発見・治療のために長期の内視鏡的経過観察が重要となる。 |
索引用語 |
食道アカラシア, 食道癌 |