セッション情報 パネルディスカッション1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎再活性化の予知・予防そして治療

タイトル 肝PD1-2追:

追跡可能な全症例から抽出した、造血器悪性腫瘍治療後のHBV再活性化21症例の検討

演者 河野 聡(北九州市立医療センター・内科)
共同演者 野村 秀幸(新小倉病院・肝臓病センター), 下田 慎治(九州大・病態修復内科)
抄録 【目的】造血器悪性腫瘍の治療後に生じたHBs抗原陰性からのHBV再活性化症例の特徴を検討する。【方法】1995年から2012年2月までに入院した造血器悪性腫瘍患者1632例が対象。調査を開始した2010年1月以降の276例は、既往感染症例を対象に最終治療後もHBs抗原あるいはHBVDNAを追跡した。調査開始以前の入院症例1356例は、原疾患治療前と現在のHBVマーカーを比較検討した。【成績】21例をHBV再活性化症例として診断した。前向き検討の276症例中、既往感染は46例(16.7%)、HBV再活性化は4例(1.4%)であった。悪性リンパ腫が17例(11例にRituximabを使用)、造血幹細胞移植症例が12例であった。最終治療から1年以内に診断した11例中9例がRituximab投与症例。1年以降に診断した10例中7例はRituximab投与歴のない同種造血幹細胞移植症例であった。Genotype はA/B/C/不明=1/2/12/6例、発症時HBs抗原陽性は18例、HBe抗原陽性は15例、HBVDNAは16例が6LC/ml以上であった。治療前HBs抗体陽性の6例中5例はHBV再活性化診断時に陰性化していた。ALT 100 IU/l以上の肝炎は8例に、T.Bil 3mg/dl以上の黄疸は3例にみられた。黄疸を伴う肝炎をきたした2症例はいずれもPC/CP変異を認めた。肝不全による死亡は2例で、12例は現在も生存している。核酸アナログ投与19例のうち、高ウィルス症例で24週以上経過が追えた10例中7例は24週以内にHBVDNA<4LC/mlとなり、うち3例はHBVDNAの陰性化が得られた。【結論】HBs抗原陰性からのHBV再活性化による肝炎は重症化すると死亡率が高いが、その背後に多くの軽症例がある。Rituximab投与症例は短期でHBV再活性化がみられるのに対し、同種造血幹細胞移植症例は長期にわたる注意が必要である。HBV再活性化においても、PC/CP変異が重症化と関連するのかもしれない。核酸アナログの反応は良好なので、早期診断・治療は有効と思われる。
索引用語 B型肝炎, 再活性化