セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-基礎1

タイトル 消P-48:

モチリン・グレリンファミリー研究のためのモデル動物スンクス(Suncus murinus)の有用性

演者 宮野 佑樹(埼玉大大学院・理工学研究科)
共同演者 仁科 和也(埼玉大大学院・理工学研究科), 相澤 清香(埼玉大大学院・理工学研究科), 坂田 一郎(埼玉大大学院・理工学研究科), 坂井 貴文(埼玉大大学院・理工学研究科)
抄録 消化管ホルモンであるモチリンとグレリンはファミリーを形成し、相互補完的な生理作用を有することが示唆されているが、ラット、マウス等の小型実験動物にはモチリンが存在せず、モチリン・グレリン研究発展の妨げとなってきた。我々は両ホルモンを産生する小型哺乳動物の探索を行い、スンクス(Suncus murinus)に着目した。まず、スンクスモチリン、グレリン遺伝子のクローニング及び、アミノ酸配列の同定を行った。また、両ホルモン産生細胞の形態学的解析を行った。さらに、スンクスの消化管にフォーストランスデューサーを縫着し、無麻酔・無拘束下で消化管収縮運動を記録した。スンクスのモチリン、グレリン遺伝子は他の動物種と高い配列相同性を持っていた。スンクスの成熟モチリンは22アミノ酸残基、成熟グレリンは18または26アミノ酸残基で存在していた。スンクスグレリンは他の動物と同様に、3番目のセリン残基が主にn-オクタン酸よるアシル化修飾を受けていた。モチリン産生細胞は上部小腸の粘膜層に、グレリン産生細胞は、胃体部と前庭部の粘膜層腺体部および腺底部に散在性に存在していた。消化管運動解析の結果、スンクスにおいてもヒトやイヌと同様に、胃から十二指腸へ伝播するMMCが観察され、phase III収縮の間隔は80-150分であった。スンクスモチリンの静脈内持続投与により胃でphase III様収縮が惹起され、この収縮はアトロピン前処理により完全に阻害された。さらに、自由摂餌下における胃収縮と行動を24時間測定した結果、明期では比較的長い絶食状態が続き、空腹時に起こるMMCが観察された。一方、暗期では頻繁に摂餌行動が観察され、食後期収縮が長時間持続した。以上の結果は、スンクスがモチリン・グレリンファミリーの消化管運動研究において有用な小型モデル動物であることを示唆する。
索引用語 消化管運動, ペプチドホルモン