セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-基礎2

タイトル 消P-53:

胃における腸上皮化生進展時に誘導される新規遺伝子Trib3による発癌・増殖機序の解析

演者 近藤 穣(東北大大学院・消化器病態学)
共同演者 今谷 晃(東北大大学院・消化器病態学), 浅野 直喜(東北大大学院・消化器病態学), 伏谷 淳(東北大大学院・消化器病態学), 千葉 隆士(東北大大学院・消化器病態学), 小池 智幸(東北大大学院・消化器病態学), 飯島 克則(東北大大学院・消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大大学院・消化器病態学)
抄録 【目的】胃においては、H.pylori感染によって腸上皮への分化変更が生じ、この分化変更の過程で分化型胃癌が生じると一般的に考えられている。一方、この過程において、Sox2遺伝子発現が抑制され、STAT6を介して相補的にhomeobox遺伝子Cdx2が誘導されることを我々は報告してきている。これらより、Sox2発現抑制Cdx2発現誘導の過程による異常が胃の発癌に関与していると類推した。そこでin vitroで、Sox2抑制モデルを作成し新規遺伝子を同定し、その遺伝子異常が発癌に関与するかを検討することを目的とした。【方法】Sox2 siRNA inducible vectorを構築後、マウス正常胃培養細胞株GSM06に遺伝子導入し、Doxycycline(Dox)存在下でSox2を抑制するstable cloneを樹立した。このSox2KOGSM06に対して、Agilent Expression Arrayを用いてMicroarray解析を行った。分化・発癌への関与が報告されている既知の遺伝子を抽出し、RT-PCRにてスクリーニングを行った。さらにWestern blotおよび免疫組織化学を用いてヒト胃癌培養細胞株・ヒト胃癌組織でのタンパク発現を検討した。また、抽出した遺伝子の発現変化が胃上皮細胞の増殖能に影響するかを検討した。【結果】Sox2KOGSM06においてSox2の発現抑制により、発現が2倍以上増強を認めた遺伝子は129遺伝子、1/2以下に発現が減弱した遺伝子は69遺伝子であった。これらの中で、pseudokinaseであるTrib3遺伝子の発現はSox2の発現抑制により8倍に増強していた。このTrib3は、Western blotの検討で、ヒト胃癌培養細胞株MKN45、MKN28、GCIYでも強発現が認められた。またヒト胃癌組織におけるTrib3の発現を免疫組織化学で検討したところ、25症例中16症例で癌細胞の細胞質に特異的に発現がみられ、ヒト胃癌の病態に関与していることが示唆された。MKN45をTrib3 siRNAでknockdownし、MTT assayを行ったところ、有意に増殖能が抑制された(0.77±0.025倍)。さらにGSM06に対してTrib3を強制発現するstable cloneを樹立し増殖能を検討したところ、正常細胞であるGSM06でもTrib3強制発現により有意に増殖能が亢進していた(1.34±0.14倍)。【結論】胃における腸上皮化生進展時の、Sox2発現が抑制される過程で誘導される遺伝子の1つとしてTrib3が同定され、このTrib3は胃癌発癌・増殖機序に関与することが示唆された。
索引用語 Sox2, Trib3