共同演者 |
菊池 寛利(浜松医大・2外科), 藤田 剛(浜松医大・2外科), 宮崎 真一郎(浜松医大・2外科), 飯野 一郎太(浜松医大・2外科), 平松 良浩(浜松医大・2外科), 太田 学(浜松医大・2外科), 神谷 欣志(浜松医大・2外科), 坂口 孝宣(浜松医大・2外科), 馬場 恵(浜松医大・2外科), 田中 達郎(浜松医大・光学医療診療部), 今野 弘之(浜松医大・2外科) |
抄録 |
【背景】悪性リンパ腫をはじめとして乳癌,大腸癌などの固形癌においても癌幹細胞理論が提唱され,癌幹細胞を階層構造の頂点とした分化モデルが提唱されるようになってきた.しかし,通常の幹細胞と癌幹細胞の関係は十分には解明されていない.また,胃幽門腺領域の幹細胞マーカーとしてLgr5が報告されているが,Lgr5が胃癌でどのように発現しているか不明である.今回胃癌におけるLgr5発現を免疫組織学的に検討し,発現の有無による組織型,悪性度の違いを検討した.【方法】2005年4月から2008年5月までの期間で,当院で手術を施行した156例のうち,残胃癌,多発癌,術前化学療法を施行した26例を除外した130例を対象としてLgr5の免疫組織染色を施行し,臨床病理学的に評価した.【結果と考察】Lgr5は通常の幽門腺領域では腺窩底部の契状細胞が染色され,胃底腺領域では狭部付近の細胞が瀰漫的に染色された.癌組織ではLgr5陽性胃癌:Lgr5陰性胃癌=74例:56例であった.Lgr5発現と臨床病理学的因子を検討すると,腫瘍径(p=0.456),性別(p=0.127),病変部位(p=0.484),深達度(p=0.5635),リンパ節転移の有無(p=0.896),Stage(p=0.5961),無病再発期間(p=0.688)との関連は認めなかったが,年齢(p=0.016),組織型(p=0.002)との間に有意差を認めた.分化型胃癌でLgr5発現が高かったことから,組織型の違いにより癌組織の起源細胞が異なる可能性があることが示唆された.また年齢が高くなるに従いLgr5陽性胃癌の割合が高くなることから,加齢に従って通常の幹細胞機能が障害され発癌の原因となる可能性が示唆された.【まとめ】胃癌において通常の幹細胞マーカーは必ずしも悪性度を反映していないことが示された.今後幹細胞マーカー以外で悪性度の指標となるマーカーを検索することが重要であると思われる. |