セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-基礎2

タイトル 消P-57:

胃癌細胞におけるTrastuzumabの抗腫瘍薬誘導DNA傷害修復過程への影響について

演者 山出 美穂子(浜松医大・1内科)
共同演者 杉本 光繁(浜松医大・1内科), 西野 眞史(浜松医大・1内科), 魚谷 貴洋(浜松医大・1内科), 杉本 健(浜松医大・1内科), 古田 隆久(浜松医大・臨床研究管理センター)
抄録 【背景】胃癌化学療法は2009年の大規模臨床試験において分子標的薬Trastuzumab (以下Tmab)の上乗せ効果が示された。本邦でも胃癌におけるTmabの使用が認可され、今後より適切な使用への考案が欠かせない。一方、Tmab併用による抗腫瘍薬の効果増強の機序は十分に明らかにされたとはいえない。既存の抗腫瘍薬はDNA傷害を誘導することで抗腫瘍効果を示すものが多い。そこでHER2発現の異なる胃癌培養細胞を用いて、抗腫瘍薬誘導DNA傷害に対するTmabの影響について検討した。【方法】HER2高発現胃癌細胞N87と発現のないMKN74を用い、DNA傷害の誘導にはトポイソメラーゼ‐1阻害薬であるSN-38を用いた。SN-38は複製依存性にDNA二重鎖切断(DSB)を誘導する。DSBの指標としてγH2AX (免疫染色、Western blot)を用いた。殺細胞効果はMTT assayにて、また傷害されたDNA修復過程への影響について、修復の初期に関わるNBS1、MRE11(Western blot)を検討した。【結果】N87とMKN74双方に対しSN-38はγH2AXを誘導し抗腫瘍効果を示した。TmabをSN-38に先行投与すると、N87ではSN-38によるγH2AX誘導、殺細胞効果が減弱したが、M74ではTmabの影響を認めなかった。TmabをSN-38後に投与すると、N87ではSN-38によるγH2AX誘導の増強と殺細胞効果の増強が認められた。これらの傾向はMKN74では認めなかった。NBS1、MRE11のリン酸化はSN-38投与時にのみ誘導されるが、Tmab併用による影響は見られなかった。【考察】Tmabは抗腫瘍薬SN-38に続いて投与したとき、その抗腫瘍効果を増強した。HER2高発現胃癌においてTmabと抗腫瘍薬を併用する場合、抗腫瘍薬を先行しTmabを後投与することが有用である可能性が示唆された。DNA傷害の修復過程への影響は、MRN複合体の段階では見られなかった。より下流の修復経路への影響、及びDNA傷害を増強する他の機序の存在についてはより一層の検討が必要であると考える。
索引用語 Trastuzumab, 胃癌