抄録 |
Epstein-Barr virus(EBV)が関連する胃癌においては、非常に高頻度にDNAメチル化異常が検出されることが報告されてきている.演者らは、EBV関連胃癌の発生のメカニズムを検討してきており、今回は、EBV関連胃癌特異的にDNAメチル化異常が起きている遺伝子の検出とEBV感染によるDNAメチル化異常の誘導機序について検討した.【方法】EBV関連胃癌特異的DNAメチル化異常の検出するため、EBV関連胃癌細胞株SNU-719細胞についてMBD2抗体を用いたMeDIP(methylated DNA immunoprecipitation)-chip行い、メチル化遺伝子を抽出した.候補遺伝子についてEBV関連胃癌の切除症例25例と年齢、性、組織型、stageをそろえた陰性コントロール50例におけるメチル化頻度を比較検討した.また、この対象に対し、既知の腫瘍関連遺伝子のDNAメチル化異常についても頻度を比較検討した。EBV感染上皮細胞株を5AZAまたはTSA処理し、EBV潜伏感染遺伝子の発現の変化を検討した.【成績】MeDIP-chipの結果から、MSP(methylation specific PCR)によりpromoter領域のメチル化が評価可能な29遺伝子について検討し、22遺伝子がSNU-719においてメチル化されていた.切除症例の検討から、TP73, ZMYND10, FSD1, BCL-7A, MARK1, SCRN1, NKX3.1の7遺伝子は、EBV関連胃癌で有意にDNAメチル化の頻度が高かった.また、MINT2, MINT31, p14, p16, RUNX3もEBV関連胃癌において、コントロールよりも有意にメチル化の頻度が高かった.EBV感染上皮細胞株では膜蛋白のLMP2Aが発現していた.LMP1の発現は低いが、5AZAやTSA処理によって発現が増強した.LMP2AとLMP1はともにDNMT1の発現を増強することが報告されている。【結論】EBV関連胃癌においては、高頻度にDNAメチル化異常が起こっており、胃癌発生の機序として重要な役割をしていると考えられた.これらを誘導するEBV潜伏感染遺伝子としては、膜蛋白のLMP1とLMP2Aの関与が示唆された |