セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発

タイトル 肝S1-2:

肝癌細胞におけるsorafenibとプロテアソーム阻害薬の相互作用

演者 本間 雄一(産業医大・3内科)
共同演者 原田 大(産業医大・3内科), 田原 章成(産業医大・3内科)
抄録 【目的】近年切除不能肝細胞癌に対する分子標的薬のsorafenibの有効性が確認されており、さらにbortezomibなどのプロテアソーム阻害薬(PI)も注目されている。Sorafenibは、血管新生を抑制することが報告されている。しかし、肝癌細胞への直接作用の詳細な機序については不明な点も多く、その解明が重要である。PIは、細胞内に異常蛋白を蓄積させ、小胞体ストレスやアポトーシスを誘導する。また肝細胞の中間径線維を構成するケラチンは、細胞保護に重要な働きを有しており、その際はケラチンのリン酸化が重要である。今回、培養細胞を用いてsorafenibやPIの細胞に対する様々な直接効果を検討した。【方法】肝癌細胞株(Huh7)を、PI(epoxomicin、ALLN)ならびにsorafenibで処理した。異常蛋白の蓄積はユビキチン、小胞体ストレスはCHOP、XBP-1とBip、酸化ストレスはHNE、アポトーシスはcaspase3、PARPのウエスタンブロットにて検討した。さらにネクローシスをpropidium iodideにて検討した。ケラチンのリン酸化はリン酸化ケラチン特異抗体で検討した。【成績】培養細胞をPIで処理することで、異常蛋白の蓄積、小胞体ストレス、酸化ストレス、アポトーシスの誘導を認めた。PIとsorafenibの併用では、蛋白のユビキチン化やunfolded protein responseが抑制された。細胞死は、PI単独でアポトーシスが誘導され、sorafenibの併用によりアポトーシスに加えネクローシスが増加した。またsorafenibはケラチンのリン酸化を阻害した。【結論】Sorafenibは、PIによる蛋白のユビキチン化、unfolded protein responseを抑制し、さらにケラチンのリン酸化を阻害して抗腫瘍効果を発揮する可能性が示された。
索引用語 sorafenib, プロテアソーム阻害薬