セッション情報 パネルディスカッション1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎再活性化の予知・予防そして治療

タイトル 肝PD1-5:

悪性リンパ腫におけるHBs抗体とHBV再活性化の関連性

演者 詫間 義隆(倉敷中央病院・消化器内科)
共同演者 守本 洋一(倉敷中央病院・消化器内科), 高畠 弘行(倉敷中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」では HBsAg陰性でHBcAb陽性and /or HBsAb陽性であればHBV-DNA含めた月1回のモニタリングが必要である.しかしながらHBsAbとHBV再活性化について検討された報告は少なく今回我々はこれらの関連性を明らかにする.【方法】2005年から2011年に当院で化学療法した悪性リンパ腫(ML)1021例(803例rituximab使用)を対象とした,HBV-DNAは検出感度以上を再活性化と定義した.【成績】(1) HBsAg陰性1002例のうちHBcAbとHBsAbが測定された704例中158例(22.4%)にHBV既往感染(HBcAb陽性 and /or HBsAb陽性, さらに治療前HBV-DNA陰性)が認められた. うち19 例(12.0%)が再活性化した. HBV既往感染例のうち再活性化群19例,非再活性化群139例の年齢,性別,rituximab使用有無, fludarabine使用有無, HBsAb陽性, HBcAb陽性など背景因子を比較すると再活性化群の平均年齢は有意に高齢 (p=0.035)で再活性化群のHBsAb陽性率26.3%は非再活性化群71.9%に比べ有意に低かった(p<0.001).しかしながら rituximab使用率含めた他の因子に有意差はなかった.多変量解析ではHBsAb陽性のみが再活性化の有意な因子であった(HR 0.15, p=0.001,logistic解析).(2) HBV既往感染158例のうちHBcAb陽性140例中18例(12.9%)が再活性化した.HBs抗体価を4段階にカテゴリー化し再活性化の頻度を比較すると10mIU/ml未満(HBsAb陰性)53例中14例(26.4%),10-100 mIU/ml未満42例中3例(7.1%), 100-1000 mIU/ml未満34例中1例(2.9%), 1000mIU/ml以上11例中0例(0%)でありHBs抗体価上昇とともに再活性化頻度は有意に減少傾向を示した(p=0.001, Cochran-Armitage test). HBsAb陽性でHBcAb陰性18例のうち1例(5.6%)再活性化し核酸アナログ投与した.【結論】HBs抗体価はHBV再活性化の抑制因子であると同時にHBsAb陽性/HBcAb陰性例から再活性化した貴重な1例を経験した.したがってHBcAbと同様に HBsAb陽性例は厳重なHBV-DNAモニタリングが不可欠である.
索引用語 HBs抗体, HBV再活性化