セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-機能3

タイトル 消P-76:

糖尿病における胃排出能の評価:胃排出シンチグラフィを用いて

演者 小谷 晃平(大阪市立大大学院・核医学)
共同演者 川村 悦史(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学), 塩見 進(大阪市立大大学院・核医学)
抄録 【目的】糖尿病患者は年々増加しており、本邦では2007年には890万人に達している。糖尿病では種々の合併症が問題となるが、しばしば消化管運動異常を呈することが知られている。今回我々は、糖尿病における胃排出能についてシンチグラフィを用いて検討した。
【方法】糖尿病を有さない29例(非糖尿病群)と、血糖コントロールのため入院加療を要した糖尿病患者32例(糖尿病群)を対象とした。全例に99mTc-DTPA 37MBq添加ワッフル検査食を用いた胃排出シンチグラフィを行った。検査食摂取後0分から120分まで経時的に撮像し、胃全体(胃近位と胃遠位で構成される)の内容物が50%になるまでの時間(T1/2)を計測し、胃排出能の指標とした。さらに糖尿病群について、T1/2と糖尿病関連因子との相関を検討した。
【成績】非糖尿病群に対し、糖尿病群ではBMIが高く(22.1 ± 3.2 vs. 26.0 ± 7.7 kg/m2, p=0.039)、血清クレアチニンが高く(0.7 ± 0.2 vs. 1.0 ± 0.8 mg/dl, p=0.028)、中性脂肪が高く(95 ± 41 vs. 141 ± 77 mg/dl, p=0.016)、空腹時血糖が高く(95 ± 6 vs. 162 ± 58 mg/dl, p<0.001)、HbA1cが高かった(5.5 ± 0.3 vs. 9.2 ± 2.0 %, p<0.001)。また糖尿病群では、胃全体T1/2(75 ± 13 vs. 101 ± 33 min, p=0.003)、胃近位T1/2(50 ± 29 vs. 72 ± 33 min, p=0.003)、胃遠位T1/2(117 ± 100 vs. 179 ± 127 min, p=0.007)が延長していた。糖尿病群について胃全体T1/2は、尿中クレアチニン(r=-0.488, p=0.005)、足関節上腕血圧比(ABI)(r=-0.496, p=0.005)と負の相関を認め、頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)(r=0.4461, p=0.012)と正の相関を認めた。その他の糖尿病関連因子(罹病期間、空腹時血糖、HbA1c等)との間には相関は認められなかった。
【結論】糖尿病患者では胃排出が遅延していた。また、微小血管障害や大血管障害合併例にて胃排出が遅延する可能性が示唆され、今後更に検討すべきであると考えられた。
索引用語 糖尿病, 胃排出シンチグラフィ