セッション情報 パネルディスカッション1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎再活性化の予知・予防そして治療

タイトル 消PD1-6:

肝移植後B型肝炎の再発予防 -HBIG12カ月間投与+長期核酸アナログ療法の有用性-

演者 田中 智大(University Health Network, University of Toronto)
共同演者 L.  Lilly(University Health Network, University of Toronto)
抄録 【背景】HBIG及び核酸アナログ製剤(NA)の導入後、肝移植後B型肝炎の再発率は著しく低下したが、費用対効果・コンプライアンス等の点から未だ最適なprotocolは確立されていない。当施設では肝移植後慢性B型肝疾患患者に対し、低用量HBIG+NA併用を導入し1年後にHBIGを投与終了しNA単独長期継続へ移行する再発予防法を1999年から採用した。【方法】当protocolではHBIGをAnhepatic phaseに初回投与(2000IU/IV)、続いて6日間連日(同量/IV~IM)、週1回×3(同量/IM)、月1回×11(同量・IM)の投与後に終了している。当施設で1999年1月以降に肝移植を受けた慢性B型肝関連疾患173例のうちlamivudine(n=97)・ tenofovir(n=25)・entecavir(n=7)をベースとした移植後再発予防を導入した患者(計129例)を対象とした。フォロー中はHBsAbを測定せずHBsAgとHBVDNAを1年目は3カ月毎、以降は6カ月毎に測定した。【結果】生体肝移植症例は17例(9.8%)、81例が肝癌合併症例で、7例がAcute-on-chronic liver failureにより肝移植を受けた。フォロー期間の中央値はlamivudine群で2046日、tenofovir及びentecavir群で924日だった。lamivudine群の累計生存率は1/5/10年で93.8/88.2/84.6%だった(死亡12例)。tenofovir群で4例、entecavir群で1例が期間内に死亡した。死亡した17例は全例B型肝炎無再発だった。B型肝炎再発を"移植後HBsAg陽性かつHBVDNA陽性"と定義しlamivudine群の9例に再発を認めた。累積再発率は1/5年で各々1.3/11.1%だった。tenofovir及びentecavir群では再発を認めなかった。再発9例の内2例は肝酵素の上昇を認めずLAM単独治療を継続、7例は他の抗ウイルス療法の追加で肝炎は鎮静化した。3群いずれもNA投薬への忍容性は良好だった。Cox比例ハザードモデルにて急性拒絶反応の治療がB型肝炎再発のリスク因子であると示唆された。【結論】肝移植後慢性B型肝疾患に対し、HBsAbを測定せず、短期間低用量HBIG投与・NA長期投与に基づく当プロトコルは有効、安全かつ簡便と考えられた。
索引用語 再発B型肝炎, HBIG