セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-H.pylori

タイトル 消P-90:

Helicobacter pylori感染による胃上皮からの炎症性サイトカイン産生に対するイルソグラジンマレイン酸塩の効果

演者 松成 修(大分大・環境・予防医学)
共同演者 塩田 星児(大分大・環境・予防医学), 山岡 吉生(大分大・環境・予防医学)
抄録 【背景】:イルソグラジンマレイン酸塩(以下イルソグラジン)は、胃粘膜細胞の恒常性を維持する作用、胃粘膜を防御する作用や抗炎症作用があり、飲酒者や喫煙者では、除菌治療後の潰瘍治癒率は、イルソグラジンがH2阻害剤より優れているという報告が最近なされ注目されている。我々は以前、イルソグラジンの抗炎症作用には、炎症性サイトカイン(Interleukin-8)産生抑制が関与していると発表したが、未だ不明な点も多い。今回、Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染胃上皮細胞におけるイルソグラジンの役割について検討した。【方法】:ピロリ菌と胃上皮細胞株(MKN45およびAGS)を共培養している系にイルソグラジンを1-100μM添加し、IL-8 mRNA発現量およびIL-8タンパク産生量をRT-PCRおよびELISAで、IL-8プロモーターの転写因子であるAP-1およびNF-κBの結合能・活性化をEMSAおよびルシフェラーゼアッセイで、さらにMAPK経路(ERK, JNK, p38)についてはウエスタンブロットで測定した。【結果】:ピロリ菌感染により、両細胞株ともに著明なIL-8発現・産生を認めたが、イルソグラジン10μM以上の添加で、有意に発現・産生が低下した(MKN45細胞の場合、10μMで、35%のIL-8 mRNA発現量低下、30%のIL-8産生量低下)。ピロリ菌感染により増強したAP-1の結合能・活性化は、イルソグラジン10μM以上の添加で有意に低下した。一方増強したNF-κBの結合能・活性化は、イルソグラジン100μMの添加でのみ有意に低下した。ピロリ菌感染により誘導されたMAPKのリン酸化は、イルソグラジン10μM以上の添加で、ERKおよびp38のリン酸化が低下したが、JNKのリン酸化低下は認めなかった。【考察】:イルソグラジンは、主にピロリ菌感染により活性化したERKおよびp38→AP-1経路を阻害することで、IL-8産生を抑制し、抗炎症作用を惹起すると考えられた。
索引用語 イルソグラジン, H.pylori