セッション情報 パネルディスカッション1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎再活性化の予知・予防そして治療

タイトル 肝PD1-8:

リツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法によるHBV再活性化:治療前および治療中におけるウイルス指標の評価

演者 中尾 将光(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
共同演者 名越 澄子(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】厚労省研究班ではリツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法による再活性の実態を前向きに検証している。高リスク群を明らかにするため,治療前のウイルス指標および再活性化時のウイルス変異を解析した。【方法】2012年2月末までに登録されたB型既往感染282例(血液120,リウマチ116,腫瘍35、腎臓11)を対象とした。ガイドラインに準拠してモニタリングを行い,HBV-DNAが検出された症例では,登録時の保存血清を用いて,HBc抗体,HBs抗体をCLIA法で統一測定,HBVのgenotype,pre-coreとcore promoter変異とともに,一部ではescape変異を解析した(田中靖人先生:名古屋市立大学に依頼)。【成績】治療開始時に6例でHBV-DNAは2.1未満であるが検出された。また,12例(4.3%)で治療開始後にHBV-DNAが陽性化し,ウイルス血症を認めた症例は計16例(5.7%)であった。再活性化は副腎皮質ステロイドないしメトトレキサートの単独療法,固形癌の化学療法でも発症した。うち3例はHBc抗体価が10以上の高力価であったが,再活性化は高力価,低力価の症例ともに認められ,HBV-DNA量が2.1以上に上昇した症例は全例が低力価例であった。また,HBs抗体が100 mIU/mL以上でウイルス血症を生じた症例も存在し,2症例ではescape変異株が確認された。再活性化したHBVはgenotype Bjでpre-core変異株のとともに,Cで野生株の場合もあった。【考案と結論】リツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法でもHBV再活性化は生じ,前治療で再活性化した症例も含めると,その頻度は約5%に相当すると推定された。既往感染例にはHBc抗体が高力価でキャリアのHBs抗原陰性化例も含まれる可能性があるが,再活性化はHBc抗体価が低値で一過性感染と考えられる症例でも出現した,また,検出されたHBV株のウイルス因子は多彩で,これによって高リスク群を囲い込むのは困難であった。また,HBs抗体が高力価でもescape変異株の存在に留意する必要があると考えられた。
索引用語 B型肝炎再活性化, ウイルス変異