抄録 |
【目的】低用量アスピリン(LDA)服用に伴う出血性胃潰瘍の臨床的特徴を明らかにする。【対象と方法】対象は吐・下血のため, 上部内視鏡検査を施行した出血性胃潰瘍400例 (M 290例, F 110例, 平均年齢66.3歳)。これらをNSAID・抗凝固・抗血小板剤非内服群(A群:181例), アスピリン内服群(B群:40例), アスピリン以外の抗血小板剤内服群(C群:24例), アスピリンと抗血小板剤併用群(D群:10例)の4群に分け臨床的特徴について検討した。検討項目は年齢, 性別, 合併症, H.pylori感染率, 潰瘍既往歴, 出血部位, 最低Hb値8g/dl以下の割合, 輸血率, 再出血率, 止血率, 胃薬内服率である。【結果】平均年齢はA群66.1, B群69.1, C群75.5, D群70.5, 性別(M/F)はA群133/48, B群28/12, C群17/7, D群5/5であった。合併症を有する割合はA群28.7%(52/181), B群52.5%(21/40), C群66.7%(16/24), D群60%(6/10)であり, B, C, D群はA群に比べ有意に高率であった。胃潰瘍の既往歴はA群37.6%(68/181), B群35%(14/40), C群16.7%(4/24), D群10%(1/10)でA群はC群に比べ有意に高率であった。H.pylori感染はA群50.3%(91/181), B群45%(18/40), C群50%(12/24), D群50%(5/10)であった。Hb値8g/dl以下の割合はA群38.7%(70/181), B群22.5%(9/40), C群45.8%(11/24), D群70%(7/10)で, D群はA, B群に比べ有意に高率であった。輸血率はA群47.5%(86/181), B群57.5%(23/40), C群66.7%(16/24), D群70%(7/10)であり, D群は他群に比べ, 高い傾向にあった。PPI内服率はA群2.2%(4/181), B群0%(0/40), C群0%(0/24), D群10%(1/10)であった。H2RA内服率はA群16.6%(30/181), B群20%(8/40), C群16.7%(4/24), D群20%(2/10)であった。粘膜保護剤内服率はA群23.8%(43/181), B群20%(8/40), C群33.3%(8/24), D群10%(1/10)であり, 全体的に内服率は低率であった。【結語】アスピリン内服単独群よりアスピリンと抗血小板剤併用群の方が, 貧血の割合, 輸血率が高率であった。アスピリン内服出血性胃潰瘍の予防には, PPI等の胃薬の内服が必要と思われた。 |