セッション情報 パネルディスカッション1(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎再活性化の予知・予防そして治療

タイトル 肝PD1-9追:

免疫抑制・化学療法を受けたHBVキャリアーおよびHBV既往感染者におけるHBV再活性化の検討

演者 仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科)
共同演者 原 裕一(川崎医大・肝胆膵内科), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科)
抄録 【目的】近年リウマチ疾患等に対する生物学的製剤のHBV再活性化リスクが指摘されているが大規模な検討がないのが現状である。そこで当院における免疫抑制・化学療法を受けたHBV既往感染者の再活性化について検討した。【対象と方法】2008年1月~2012年2月に免疫抑制・化学療法を受けた既往感染者137例の再活性化率ならびに既往感染者における再活性化関連因子を検討した。【結果】HBV再活性化率は10.2%(14/137)であり、主要な免疫抑制剤・化学療法別再活性化率(重複含む)は、リツキシマブ23.3%(7/31)、PSL 14%(14/100)、MTX 3.1%(2/65)、生物学的製剤0%(0/13)であった。多変量解析では初診時HBs抗体の有無(陽性,odds ratio:4.019,95%CI:1.189-13.591,P<0.05)が再活性化関連因子であった。なお、HBc抗体陽性者は97.8%(132/135)とほぼ全例であり検討から除外した。再活性化を認めた14例は全例核酸アナログ製剤(NA; ETV)が投与されたが、そのうち8例は厚生省研究班ガイドラインに準じたNA投与開始が可能であった。うち2例は免疫抑制剤終了1年後のHBV-DNA陰性化を確認し、さらに1例はHBs抗原も陰性であったためNAを中止したがともにHBV-DNAは再陽性化した。一方、肝炎発症後に再活性化を指摘された6例のうち2例は亜急性劇症肝炎で死亡した。【結論】今回の検討では生物学的製剤によるHBV再活性化の頻度はそれほど高くなかった。しかし、厚労省研究班ガイドラインの順守は重篤な肝炎発症を防ぐ点で重要と考えられた。NA投与中止基準は今なお明確ではないが、今後の重要な検討課題と考える。
索引用語 HBV再活性化, 免疫抑制療法