抄録 |
【目的】B型肝炎ウイルス(HBV)の既感染例に対して化学療法や免疫抑制剤投与後にHBVの再活性化を生じることが問題となっているが、いまだ宿主因子側の関与は不明な点が多い。今回我々は、HBVキャリアとHBV既感染例の血清cytokine,抗原特異的CTL数の比較および再活性化症例(6例)の経時的な免疫学的解析の結果を報告する。【方法】HBV既感染症例(34例)、無症候性HBVキャリア症例(ASC)(17例),慢性B 型肝炎症例(CHB)(17例),再活性化症例(6例),健常人(12例)の末梢血リンパ球を用いて、1) CD8+HLA-A2,A24-tetramer+(core, polymerase)細胞数、PD-1, CD62Lの発現2)CD4+Foxp3+,CD25+細胞数5)Bio-Plexを用いて血清cytokine、chemokine濃度の測定を行った。また6例の再活性化症例に対しては経時的にCTL数、CD4+Foxp3+数、HBVDNA, 血清ALTを測定した。【成績】再活性化症例は男女3名ずつで悪性リンパ腫2例(1例;rituximab投与)、骨髄移植例(全てallogenic)3例、食道癌1例であった。血清cytokine濃度の測定から既往感染例ではASC、CHBと比較し血清IL-7, IL-8, MCP-1の上昇を認めた。また再活性化症例では健常人と比較しG-CSFの上昇がみられた。抗原特異的CTL数に関しては、再活性化時にはASC, CHBと比較し有意に上昇しており、PD-1の発現低下を認めた。一方CD4+Foxp3+数は減少傾向を認めた。また経時的な解析より再活性時には抗原特異的CTL数の上昇を認め、CD4+Foxp3+数は減少しており肝機能の改善とともに増加していた。【結論】HBVの再活性化症例では肝障害発症においてCD4+Foxp3+数と抗原特異的CTL数の逆相関が示唆され、ウイルス側の因子だけでなく宿主の因子の重要性も示唆された。 |