抄録 |
【目的】酸分泌抑制剤はGERDや消化性潰瘍の治療において世界中で用いられているが、近年欧米で酸分泌抑制剤使用と骨折リスクとの関連に関する報告が相次いでいる。わが国も高齢化に伴い骨粗鬆患者も増加傾向にあるが、酸分泌抑制剤使用歴と骨代謝との関連についての報告はない。今回、酸分泌抑制剤使用と骨代謝との関連を検討することを目的とする。【方法】2008年4月~2011年2月までに当科にて(1)腰椎DEXA(Bone Mineral Density(BMD), YAM%, Z-score),(2)骨代謝マーカー(NTX,BAP)の両検査を受けた50歳以上の患者を対象とした。上記(1)(2)の項目について、酸分泌抑制剤(PPI or/and H2 receptor antagonist(H2RA))使用歴の有無により、(A)酸分泌抑制剤使用群(使用群)と(B)酸分泌抑制剤非使用群(非使用群)とに分けて比較検討した。除外症例として、ステロイド剤・ビスフォスフォネート剤・Vit.D製剤内服患者や、甲状腺・副甲状腺疾患、胃切除後症例は除外した。【成績】使用群は60例(男性23例、女性37例、平均年齢64.3±8.6歳)、平均年齢64.3±8.6歳、使用群における酸分泌抑制剤の平均使用期間は18.2±16.4カ月であった。非使用群は60例(男性32例、女性28例、平均年齢63.7±8.7歳)であった。骨粗鬆症症例は、使用群で14例(23.3%)(男性1例、女性13例)、非使用群で8例(13.1%)(男性2例、女性6例)であった。非使用群と比べ使用群では有意にBMD, YAM %, Z-scoreがいずれも低値であった(p<0.05)。骨代謝マーカー(NTX,BAP)は両群で明らかな差は認めなかった。【結論】酸分泌抑制剤使用は骨代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。 |