セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-症例報告1

タイトル 消P-179:

低悪性度前駆病変から発生した胃悪性GISTの一例

演者 中嶋 隆彦(NTT東日本関東病院・病理診断部)
共同演者 杉山 敏郎(富山大・3内科), 村田 建一郎(NTT東日本関東病院・病理診断部), 福島 純一(NTT東日本関東病院・病理診断部), 堀内 啓(NTT東日本関東病院・病理診断部)
抄録 【はじめに】胃悪性GISTは腫瘍発生時からの性質であるのか,低悪性度の前駆病変に由来するのかは明らかではない.【症例】30歳代,女性【主訴】タール便【既往歴】8年前より胃粘膜下腫瘍を前医で経過観察中【現病歴】定期的な内視鏡検査で増大傾向はなく無症状で経過していた.タール便があり当院に紹介入院した.【入院後経過】胃粘膜下腫瘍上に新たに出血性潰瘍を認め腫瘍切除術を施行.【病理所見】最大径1.9cmで敷石状配列をとる多辺形細胞と束状の短紡錘形細胞の混在からなる腫瘍.低悪性度域に内包される高悪性度域があり両者は境界を形成した.低悪性度域は,壊死はなく核分裂数は2個/50強拡大視野.高悪性度域は高細胞密度で壊死と出血があり,核分裂数は31個/50強拡大視野.免疫組織化学的に,部位を問わず腫瘍細胞は細胞膜と細胞質にKIT(+)であり胃GIST(mixed spindle and epithelioid type)の診断.低悪性度域はCD34(+),αSMA(+),MIB1標識率は2%.高悪性度域はCD34(-),αSMA(-,一部弱+),MIB1標識率は21%であった.【術後経過】術後25ヶ月目に肝転移再発.肝動脈塞栓術を施行するも効果なく腹膜播種が出現.対症療法を行い術後56ヶ月目に死亡.剖検が施行された.以上の経過は本邦におけるイマチニブ導入前であり分子標的治療薬の投与は行われていない.【解剖所見】17cm大までの肝転移,腹膜播種巣を認めた.原発巣の高悪性度域と同様に,高細胞密度、壊死、出血がありKIT(+),CD34(-),αSMA(-,一部弱+)であった.直接死因は肺炎による呼吸不全および多発肝転移による肝不全と診断.【考察】胃悪性GISTの段階的腫瘍発生を実証する一例.原発の胃腫瘍は悪性度の異なる境界明瞭な領域からなり高悪性度腫瘍細胞のみが転移した.8年間無症状で経過した後,転移をきたした臨床経過も段階的腫瘍発生を支持する.
索引用語 GIST, 段階的腫瘍発生