セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-症例報告1

タイトル 消P-180:

経過中に内視鏡所見が変化した胃サルコイドーシスの一例

演者 野澤 さやか(東京共済病院・消化器科)
共同演者 福島 啓太(東京共済病院・消化器科), 篠原 玉子(東京共済病院・消化器科), 田中 啓(東京共済病院・消化器科), 吉岡 篤史(東京共済病院・消化器科), 菅原 和彦(東京共済病院・消化器科)
抄録 経過中に内視鏡所見が変化した胃サルコイドーシスの一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。症例は71歳男性。毎年健診にて上部消化管内視鏡検査を受けており、2006年より体中部大弯前壁に、頂部にびらんをともなう粘膜下腫瘍を指摘されていたが、生検にて悪性所見なく増大傾向もないため経過観察となっていた。2010年9月の上部消化管内視鏡検査にて、前壁の粘膜下腫瘍は増大し潰瘍形成を認め、また前年は指摘されていなかった体下部大弯、体上部小弯、噴門部後壁にも多発する小粘膜下腫瘍を散見した。超音波内視鏡を施行したところ、カルチノイドや転移性腫瘍を否定できなかったため、粘膜下層剥離下生検を施行した。生検結果より乾酪壊死を伴わない肉芽腫性病変を認め、サルコイドーシスが疑われた。サルコイドーシスの全身検索をおこなったところ、血清カルシウム、リゾチーム、ACE、γグロブリンは正常範囲内、胸部レントゲンにて両側肺門リンパ節に腫脹認めず、心エコー、心電図においても異常所見認めなかったが、ツベルクリン反応は陰転化しており、自覚症状はないが虹彩前癒着を認めた。サルコイドーシスの診断基準に照らしサルコイドーシスと診断した。ただし、検索しえた範囲内では明らかな心病変、および肺・眼病変による自覚症状は出現しておらず、胃限局性サルコイドーシスと思われたため、ステロイド治療は行わず経過観察の方針とした。サルコイドーシスは、両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚に罹患頻度が高い原因不明の多臓器病変である。消化管に病変を認めることはきわめてまれであり、胃はその中で最も罹患頻度が高い。胃サルコイドーシスの肉眼所見は多発潰瘍やびらん、スキルスを疑わせる粘膜の肥厚や硬化、結節性隆起性病変などが挙げられるが多彩であり、特異的なものはないが、本症例のように多発粘膜下腫瘍様形態を呈した症例は報告が少なく、きわめてまれな一例と考える。
索引用語 胃サルコイドーシス, 粘膜下腫瘍