セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-症例報告1

タイトル 消P-181:

多腺性自己免疫症候群に合併したA型胃炎を背景とした多発胃カルチノイドの一例

演者 山村 雄太(富山県立中央病院・内科)
共同演者 堀田 洋介(富山県立中央病院・内科), 平井 聡(富山県立中央病院・内科), 島谷 明義(富山県立中央病院・内科), 松田 耕一郎(富山県立中央病院・内科), 平松 活志(富山県立中央病院・内科), 松田 充(富山県立中央病院・内科), 荻野 英朗(富山県立中央病院・内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院・内科)
抄録 【症例】42歳女性。12歳時にバセドウ病、17歳時にI型糖尿病を発症。22歳時より当院内分泌内科にて加療中であった。2010年11月、胃もたれ感を認めたため、上部消化管内視鏡検査を施行。胃底部から胃体部を中心としたA型胃炎を疑わせる萎縮性胃炎と2~3mm大の多発ポリープを認めた。生検組織像では、小胞巣状から索状構造を示す腫瘍細胞を認め、免疫染色ではchromogranin A(+), synaptophysin(+), NCAM(+)とカルチノイドの所見であった。追加検査では血清ガストリン8438 pg/ml、胃壁細胞抗体20倍、抗内因子抗体陽性でありA型胃炎に続発したTypeIの胃カルチノイドと診断した。また、同時期にビタミンB12欠乏による悪性貧血も認め、バセドウ病、I型糖尿病の合併もあることから多腺性自己免疫症候群と診断した。従来、胃カルチノイドに対する治療として胃全摘術などが施行されていたが、近年TypeIの胃カルチノイドにおける腫瘍関連死の割合は非常に低い事が報告されており、本例も経過観察の方針となった。また本例ではA型胃炎では頻度が低いHelicobacter pylori感染を確認しており、pylori菌の除菌による所見の改善を期待して、Helicobacter pylori菌療法を施行した。今後は、Helicobacter pylori除菌の確認とともに、上部消化管内視鏡検査やガストリン値の経過をフォローし、除菌療法の効果や幽門洞切除術の適応を含め検討していく予定である。【考察・まとめ】多腺性自己免疫症候群に合併した胃カルチノイドの一例を経験した。胃カルチノイドは、A型胃炎に続発するものが約70%を占めると報告されている。我々が検索した限りでは、本症例のように多腺性自己免疫症候群に合併したA型胃炎を背景とした胃カルチノイドの症例報告はわずか2例のみであり、非常に稀な症例と考えられた。また本例は、Helicobacter pylori感染も認められ、除菌療法による効果も含め、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 胃カルチノイド, 多腺性自己免疫症候群