セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃-症例報告1

タイトル 消P-182:

急速に増大し短期間に多発骨・肝転移をきたした胃粘膜下腫瘍の1剖検例

演者 齊藤 真弘(JR仙台病院・消化器科)
共同演者 及川 圭介(JR仙台病院・消化器科), 寺井 志保(JR仙台病院・消化器科), 猪股 芳文(JR仙台病院・消化器科), 安倍 修(JR仙台病院・消化器科)
抄録 症例:74歳女性
既往歴:2009年7月下肢静脈瘤のため入院。その際のCTでは腹部に異常は指摘されなかった。同年8月、定期検査の上部内視鏡でも異常は認めなかった。
現病歴:2009年12月頃より腹部不快感を自覚し当科を受診した。症状が持続するため2010年3月に上部内視鏡を施行したところ胃体上部後壁に巨大な粘膜下腫瘍様の隆起を認め、精査加療のため入院となった。
経過:CTでは腹腔内に径13cmの巨大な腫瘍を認め、肝に転移巣と考えられる多発性の腫瘤を指摘した。PETでは胃にSUV 20と高度のFDG集積を認め、肝・椎体及び上腕骨や大腿骨にも集積を認めた。EUSでは腫瘍は胃壁第4層と連続、内部は不均一な低エコーを呈し、壊死巣と思われる無エコーの混在を認めた。診断確定のため胃原発巣に対しEUS-FNABを行った。病理組織検査にて大小不同で多形性の腫瘍細胞がシート状に密に増殖した像を認め、間葉系腫瘍と考えられた。免疫染色ではKIT, CD34, SMA, s-100ともに陰性であり、c-kit陰性のGISTが疑われた。MIB1-LIは70%と著明高値であった。手術適応はなく、imatinibによる化学療法を開始した。しかし、経過観察のCTにて腫瘍の著明な増大を認め、全身状態も急速に悪化し5月14日永眠した。ご遺族の承諾を得て病理解剖を施行した。原病巣は胃筋層と連続した14×12cmの充実性の腫瘍であり内部に出血・壊死を認めた。周囲を平滑な被膜で覆われていたが膵への直接浸潤を認めた。肝の転移巣の最大径は14cmであった。病理組織像はEUS-FNABと同一で、免疫染色でもKIT, CD34, SMA, desmin, s-100ともに陰性であった。遺伝子検査ではc-kit・PDGFRAともに変異を認めなかった。
考察:本例は胃の筋層に由来する間葉系腫瘍であるが短期間で急速な増大と多発性の肝・骨転移を来しており、極めて悪性度が高い病変といえる。しかしながら、免疫染色はc-kit, CD34, SMA, s-100ともに陰性で遺伝子検査でもc-kit・PDGFRAともに変異を認めず、確定診断に至らなかった。診断困難な症例を経験したので報告する。
索引用語 胃粘膜下腫瘍, 剖検例