共同演者 |
馬渕 龍彦(安城更生病院・内科), 小屋 敏也(安城更生病院・内科), 鈴木 悠土(安城更生病院・内科), 須原 寛樹(安城更生病院・内科), 市川 雄平(安城更生病院・内科), 富田 英臣(安城更生病院・内科), 竹内 真実子(安城更生病院・内科), 細井 努(安城更生病院・内科), 山田 雅彦(安城更生病院・内科), 佐藤 文哉(安城更生病院・外科), 新井 利幸(安城更生病院・外科) |
抄録 |
【症例】82歳、女性 【主訴】左季肋部痛 【既往歴】高血圧、高脂血症、緑内障、肺炎【現病歴】2010年12月、食後の左季肋部痛を主訴に近医受診し、単純CTにて腹腔内腫瘤を認め、翌日当院紹介受診となった。【現症】身長143.5cm体重55.3kg。腹部に自発痛、圧痛を認めなかったが、心窩部に手拳大の腫瘤を触知した。【経過】初診時Hb 11.4g/dL, WBC 11400 /μL,CRP 0.55 mg/dL, AST 18IU/L, ALT 13IU/L, 総ビリルビン 0.49mg/dL, CEA 135.5 ng/mL, CA19-9 2U/mL未満であった。腹部超音波検査で心窩部に14×9cmの嚢胞性腫瘤を認め、辺縁の充実性部分に血流を認めた。造影CTでは胃小弯側から網嚢部にかけて後壁に広範囲に接し、一部嚢胞状構造が胃壁と連続する7×8×12cmの腹腔内 嚢胞性腫瘍を認めた。膵臓との境界は保たれていた。1cm大に腫大した小弯側リンパ節の他には、肝・肺に転移は認めなかった。上部消化管内視鏡検査にて前庭部後壁側に壁外性圧排と、その大弯側に発赤した粘膜下の隆起と粗大顆粒を持つ不整な潰瘍を認め、生検病理は高分化腺癌、中分化腺癌であった。3型胃癌と考えたが、嚢胞性病変との関連は術前診断困難であった。外科に紹介し、2011年3月、幽門側胃切除、D2廓清を施行した。術中、胃には前庭部後壁より壁外性に発育する15cmの嚢胞性病変を認めた。切除標本において、胃前庭部に異所性膵を認めた。腫瘤は膵組織に隣接しており、前庭部漿膜下織で多房性嚢胞を形成し、嚢胞内に高度異型上皮の乳頭状の発育を認めた。異型上皮は粘膜面に露出しており、胞体内には多量の粘液を含む高円柱上皮を認めた。膵粘液性嚢胞腺癌に類似した組織像であったが、卵巣様間質は認めなかった。癌は横行結腸間膜に浸潤しており、INFβ, 1y1, v0, pT4b(SI), pN1, pPM0, pDM0, pR0であった。【結語】極めて稀と考えられる、胃の異所性膵に発生した嚢胞性腺癌を経験したので報告する。 |