セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸-基礎1

タイトル 消P-206:

初代培養小腸上皮細胞による生理的フラジェリン応答解析

演者 鄭 秀(東京医歯大・消化器病態学)
共同演者 土屋 輝一郎(東京医歯大・消化器病態学), 岩嵜 美智子(東京医歯大・消化器病態学), 加納 嘉人(東京医歯大・消化器病態学), 水谷 知裕(東京医歯大・消化器病態学), 油井 史郎(東京医歯大・消化器病態学), 岡本 隆一(東京医歯大・消化器病態学), 中村 哲也(東京医歯大・消化器病態学), 渡辺 守(東京医歯大・消化器病態学)
抄録 【目的】TLR5を介したフラジェリン応答は腸管自然免疫の中心的な役割を果たしており、上皮細胞ではTLR5は基底側に発現し細菌の粘膜内侵入により作用すると考えられているが、基底側からのフラジェリン応答解析はこれまで不可能であった。しかし、Satoら(Nature 2009)により小腸上皮細胞の3D初代培養が成功し、陰窩構造や細胞構成を保持した単層のスフェロイドとして上皮細胞のみの解析が可能となった。さらに上皮細胞の基底側が外側に露出することから、基底側からのフラジェリン刺激応答解析が可能となり、今回上皮細胞の生理的なフラジェリン応答を明らかとすることを目的とした。【方法】マウス小腸上皮をSato法により初代培養を行い、TLR5の局在を蛍光免疫染色で解析した。フラジェリンを添加し基底トル側からの刺激を行い、上皮細胞応答をマイクロアレイにより誘導発現遺伝子を網羅的に検出した。さらにATG5欠損マウス由来の小腸上皮を用い、フラジェリン応答におけるオートファジー機能を解析した。【結果】TLR5は上皮細胞の基底側細胞膜上に限局して発現していた。マイクロアレイ解析により、フラジェリン応答遺伝子として種々のサイトカイン、ケモカイン、酸化酵素の発現誘導を認めた。これらは刺激に一過性に上昇する遺伝子群と7日間持続して誘導される遺伝子群に分類された。ケモカインであるCXCL10は培地中への蛋白分泌をELISAにて確認し、基底側から間質に分泌されることが示唆された。MyD88欠損マウス由来小腸上皮ではフラジェリン応答は認めなかった。さらにATG5欠損マウス由来の小腸上皮ではフラジェリンによるCXCL10の過剰分泌を認めた。【結論】細菌の侵入による小腸上皮の基底膜側でのフラジェリン暴露により上皮細胞は種々の免疫応答をおこし、粘膜での自然免疫誘導を行うことが示唆された。さらにオートファジー不全はフラジェリンによる過剰応答を示し、クローン病の病態と関連する可能性が示唆された。
索引用語 フラジェリン, 小腸初代培養