セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸-基礎1

タイトル 消P-207:

小腸粘膜上皮細胞HSP90の機能解析

演者 上田 久美子(順天堂大・消化器内科)
共同演者 大高 道郎(順天堂大・消化器内科), 高田 真紀子(順天堂大・消化器内科), 渋谷 智義(順天堂大・消化器内科), 坂本 直人(順天堂大・消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大・消化器内科)
抄録 【目的】小腸内視鏡の普及によりNSAID起因性小腸粘膜傷害の発生率は従来の推測より高いことが明らかとなり、臨床上問題となっているがその発症のメカニズムや治療法に関しては解明されているとはいえない。熱ショック蛋白質(heat shock proteins: HSPs)が、そのシャペロン機能を介し、胃粘膜や大腸粘膜において重要な細胞防御因子であることは我々の報告を含め数多く報告されている。しかし小腸粘膜におけるHSPsの発現や機能に関しては、ほとんど明らかにされていなかった。最近我々はHSP90高発現小腸粘膜上皮細胞では、過酸化水素、インドメサシンによる細胞障害に対する細胞防御機能が増強することを明らかにし報告した。本研究ではHSP90ノックダウン小腸粘膜上皮細胞の細胞防御機能をコントロール細胞と比較検討することによって、HSP90の機能解析の裏付けを行う。【方法】ラット小腸粘膜上皮細胞(IEC-6)にHSP90のstealth select RNAを用いてHSP90ノックダウン小腸粘膜上皮細胞を作成した。 抗ネクローシス能はIEC-6細胞とHSP90ノックダウン小腸粘膜上皮細胞を高濃度の過酸化水素またはインドメサシンと2時間反応させ、細胞生存率をMTT-assayにより、細胞壊死をLDH-releaseにより比較検討した。 抗アポトーシス能は、両細胞を低濃度の過酸化水素またはインドメサシンと24時間反応させ、MTT-assay、Caspase 3/7活性、TUNEL-stainingにより評価した。【成績】HSP90ノックダウン小腸粘膜上皮細胞 の細胞防御能は、コントロール細胞に比し、過酸化水素、インドメサシンによるネクローシス、アポトーシスのいずれの条件下においても抑制されていた。【結論】これらの結果より、小腸粘膜上皮細胞防御機構においてHSP90は極めて重要な役割を演じていることが明らかとなり、分子シャペロン誘導療法はNSAID起因性小腸粘膜傷害や炎症性腸疾患の新たな治療法の開発に有用と考えられた。
索引用語 Heat shock protein, 小腸