セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸-臨床1

タイトル 消P-223:

経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査におけるウリナスタチン投与による高酵素血症抑制効果に関する検討

演者 板場 壮一(九州大・病態制御内科DELIMITER麻生飯塚病院・消化器内科)
共同演者 中村 和彦(九州大・病態制御内科), 秋穂 裕唯(九州大・病態制御内科)
抄録 【目的】急性膵炎は重症化することがあり、経口DBEの注意すべき合併症である。我々は膵炎を発症しなくても、検査後に高アミラーゼを高頻度に認める事をと報告した。経口DBE後の高酵素血症や膵炎の原因はいまだ究明されておらず、予防策もないのが現状である。一方、ERCP後膵炎は重要な合併症であり、膵炎予防のため様々な薬が使用されてきた。ウリナスタチンは蛋白分解酵素阻害剤であり、無作為化比較試験においてERCP後の膵炎発症を軽減できたとの報告がある。本研究では経口DBE施行患者に対して、術中にウリナスタチンもしくはプラセボ投与を行い、高酵素血症に改善が認められるか無作為化比較試験を立案した。【方法】ウリナスタチン群はウリナスタチン15万単位を生理食塩水100mlに溶解し、DBE施行開始時より2時間で点滴静注した。膵型アミラーゼ、リパーゼ値を術前、検査後3時間、翌朝に測定した。血清膵型アミラーゼもしくはリパーゼ値が術前の2倍以上に上昇し、正常値を超えたものを高酵素血症として定義した。【成績】2007年5月から2009年12月の期間に43人が登録され、2010年1月中間解析が行われた。23人がウリナスタチン群、20人がプラセボ群に割り付けられ、年齢、性別、スコープの種類、内視鏡挿入時間、ストレッチ回数、検査前の血清膵型アミラーゼ、リパーゼ値には両群間で差を認めなかった。検査後高アミラーゼ血症はプラセボ群で30%、ウリナスタチン群で34.8%に認めた。検査後高リパーゼ血症はプラセボ群で35%、ウリナスタチン群で47.8%に認めた。高酵素血症はプラセボ群35%、ウリナスタチン群で47.8%に認め、統計学的にウリナスタチン投与による高酵素血症抑制の可能性は低いと考えられた。急性膵炎はプラセボ群で1例認めた。【結論】本研究によりウリナスタチンの高酵素血症抑制効果を認めることはできなかった。今後経口DBE後急性膵炎、高酵素血症発症のメカニズム解明、有用な予防法の開発が望まれる。
索引用語 ダブルバルーン小腸内視鏡, 高酵素血症