セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
小腸-症例報告1
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タイトル |
消P-233:プロテインS欠乏症に伴う上腸間膜静脈血栓症による回腸壊死の一例
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演者 |
甲賀 啓介(甲賀病院・消化器内科) |
共同演者 |
永田 健(甲賀病院・消化器内科), 三鬼 慶太(甲賀病院・消化器内科), 甲賀 新(甲賀病院・消化器内科) |
抄録 |
【症例】63歳男性【既往歴】幼少時:虫垂炎(手術)、61歳:虚血性腸炎、十二指腸静脈瘤、S状結腸静脈瘤【現病歴・経過】2010年12月下旬、1カ月間持続する間欠的な右下腹部痛を主訴に受診した。初診時、右下腹部に強い自発痛を訴えるものの、理学所見として、腹壁は平滑・軟であり、圧痛・反跳痛は軽微であった。血液検査にてCRP:8.1mg/dlと炎症所見の上昇を認め、腹部単純CT検査にて上行結腸に限局した腸管壁の浮腫性変化を認めたため、急性腸炎の診断にて入院加療となった。入院翌日の腹部造影CT検査では、上腸間膜静脈の拡張および著明な側副血行路の発達を認めたが、門脈・上腸間膜内に血栓を示唆する陰影欠損は明らかでなかった。入院後、絶食補液により症状は軽快していたが、第8病日に右下腹部痛が増強し、腹膜刺激症状が出現した。再度腹部造影CT検査を行い、上行結腸から回腸へ連続する腸管浮腫および腹水を認めたため、上腸間膜静脈血栓症と診断し、緊急手術を施行した。術中所見として、腹腔内には漿液性の腹水が見られ、回盲弁より70cm長にわたって回腸の壊死および腸間膜の肥厚を認めたため、壊死腸管を切除し、端々吻合を行った。病理組織検査では、腸間膜静脈内に多数の新鮮および陳旧性血栓と、腸管壁の全層性出血性壊死を認めた。また、手術後の血液検査にてProtein S活性値は低値を示した。術後、ワーファリンによる抗凝固療法を行い、経過良好にて退院となった。【考察・結語】血液検査にてProtein S活性値が低下していたことから、本症例はProtein S欠乏症に伴う上腸間膜静脈血栓症と考えられた。また、2年前に虚血性腸炎を発症し、同時に指摘された十二指腸およびS状結腸静脈瘤も経過観察にて消退した既往を併せると、慢性の経過において血栓が形成された結果、側副血行路が発達し、緩徐な臨床経過を辿って、今回のエピソードに至った可能性が示唆された。Protein S欠乏症に起因する上腸間膜血栓症は非常に稀な疾患であり、若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
上腸間膜静脈血栓症, プロテインS欠乏症 |