セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸-症例報告3

タイトル 消P-243:

診断に苦慮した腹部放線菌症の一例

演者 三浦 翔(姫路赤十字病院・内科)
共同演者 高木 慎二郎(姫路赤十字病院・内科), 森下 博文(姫路赤十字病院・内科), 高谷 昌宏(姫路赤十字病院・内科), 深津 裕寿(姫路赤十字病院・内科), 岸田 裕志(姫路赤十字病院・内科), 上坂 好一(姫路赤十字病院・内科)
抄録 【症例】63歳、男性【主訴】下腹部痛、腹部膨満感【既往歴】27歳:胃潰瘍にて胃部分切除術【現病歴】2009年8月から食事摂取後の腹部膨満感と便秘を来し、次第に下腹部痛を自覚した。近医を受診したところ腹部に腫瘤を指摘されたため、精査加療目的で当院紹介となった。【入院後経過】入院時、臍部に発赤を認め、腹部正中に手拳大の腫瘤を触知した。腹部超音波検査では、腹腔内から臍部に及ぶ6cm大の境界不明瞭な低エコーの腫瘤を認め、空腸と連続していた。腹部造影CTでは腫瘤はlow densityで不均一な造影効果を示す腫瘤であった。小腸腫瘍もしくは腸管膜腫瘍の臍部への浸潤を疑い、臍部の皮膚組織から生検を行った。しかし、病理組織は脂肪織炎であり、悪性所見を認めなかった。小腸透視検査では周囲腸管の圧排像を認めるものの、腸管内腔の不整はなく、PET-CTでは腫瘤は高度集積を呈し、その他は生理的集積のみであった。悪性腫瘍を否定できないことから外科的処置が必要と判断し、腫瘤摘出術を行った。手術所見では腫瘤は腸管膜および空腸・回腸を巻き込むように存在し、周囲腸管と高度な癒着を来していた。癒着剥離は困難であったが、臍部を含んだ腹壁・腸管膜・小腸を一塊として腫瘤を摘出した。病理組織では腫瘤は広範囲に膿瘍を形成し、炎症性肉芽腫を認めた。また、膿瘍内には細く分枝するフィラメント状の菌体の放線菌の塊からなる1mm前後の菌塊を認め、放線菌の菌塊(Druse)と考えられた。以上から、腹部放線菌症と診断した。【考察】放線菌属は口腔や消化管等の常在菌として存在するグラム陽性桿菌で局所の粘膜障害や宿主の免疫不全状態を契機にあらゆる部位に感染症状を生じうる。今回、我々は小腸腫瘍ならびに腸管膜腫瘍と鑑別が困難であった腹部放線菌症の一例を経験したので、文献学的考察を加えて報告する。
索引用語 放線菌, 小腸