抄録 |
【背景】炎症性腸疾患(IBD)の活動性指標は内視鏡がgolden standardであるが、小児ではより非侵襲的で指標が望まれる。カルプロテクチンは好中球細胞質のCa結合蛋白であり、その便中濃度は腸管炎症と相関すると注目されている。【方法】 便をUC 患児から101検体、CD 患児から93検体、健常児から28検体採取し、便上清を調整した。カルプロテクチン濃度(以下便Cal、μg/g)をELISA法で測定し、臨床活動性指標(UC:Pediatric Ulcerative Colitis Activity Index、CD:Pediatric Crohn’s Disease Activity Index)や内視鏡スコア(UC:Matts’ grade、CD:Simple Endoscopic Score for Crohn’s disease)と比較した。小腸型CDの便Calは超音波所見と比較し、血流シグナル陽性で恒常的な3mm以上壁肥厚を活動病変とした。【結果】 (1)UC、CDとも便Calは臨床活動性指標と正の相関を認めたが(UC:n=101,r=0.635,p<0.01、CD:n=93,r=0.640,p<0.01)、内視鏡スコアとより強い相関を認めた(UC:n=38,r=0.838,p<0.01、CD:n=25,r=0.760,p<0.01)。(2)UC、CDとも内視鏡活動群の便Calは寛解群や健常児群より有意に高値であった(UC:中央値1562.5 vs 38.9, 19.9、CD:中央値2037.7 vs 172.5,19.9)。(3)小腸型CDの便Cal(n=17)も、壁肥厚群は非肥厚群より有意に高値であった(中央値2225.0 vs 17.5)。【考察・結語】便Calは粘膜所見と強い相関を認め、小児IBDでも非侵襲的に測定できる良い活動性指標と考えられる。臨床的には寛解でも便Cal高値例は活動性病変が存在することを念頭に置く必要がある。 |